研究課題/領域番号 |
19K14125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北山 夕華 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30547790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多文化コンピテンシー / 教師教育 / 多文化主義 / ノルウェー |
研究実績の概要 |
本研究は、多文化共生に資する教員養成プログラムや教養教育について、政策分析と教育関係者へのインタビュー調査の両面から明らかにすることを目的としている。課題の初年度である2019年度に実施した研究内容は、主に下記の5点である。 (1)ノルウェーおよび日本の教育政策における多文化主義について、教育政策文書や関連する研究論文などの文献資料を収集し、分析した。 (2)教員養成プログラムにおける多様性コンピテンシーの育成について、奈良教育大学で教師の多様性コンピテンシーの育成を意識した教員養成課程の授業に取り組んでいる教員3名にインタビューを実施した。 (3)サウスイースタン・ノルウェー大学を訪問し、大学が地域の学校と協働で取り組んでいる、子どもの文化的多様性と民主主義を促進する実践について、大学教員2名にインタビューを実施した。 (4)ノルウェーの教育における多様性コンピテンシーについて、これまでの研究成果を教師教育・学校教育・社会教育のそれぞれの切り口から考察し、国内・国際学会において発表した。 (5)1~4の成果について、ノルウェーの教育における多様性と民主主義をテーマに、日本教育学会の第78回研究大会 特別課題研究の報告の形で『教育学研究』に掲載し、(b) 教師教育者へのインタビューをもとにした論文‘Teacher Education for Social Justice: Case studies of Japanese and Norwegian educators’をAnnals of Educational Studiesに英語論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究等で築いてきたサウスイースタン・ノルウェー大学と奈良教育大学の研究者とのつながりを生かし、資料収集や現地調査についてはこれまで概ね順調に進めることができた。 奈良教育大学では文化的多様性の認識を深めることを意識した取り組みをしている教師教育者にインタビューし、それぞれの問題意識や授業の工夫、直面する課題について聞き取りをおこなった。 9月にはノルウェーで現地調査をおこない、教師教育および地域の学校との協働で多文化コンピテンシーを促進する取り組みをしている研究者に聞き取りを実施し、それらの進捗や課題について情報を得ることができた。また、障害者のシティズンシップやその法的側面など、関連分野の研究者ともコンタクトを取り、広義の多様性に対して開かれた教育のあり方について情報交換をおこなった。 さらに、9月に参加した欧州教育学会の研究大会においてインランド・ノルウェー応用科学大学の研究者らと交流し、政府主導で進められた多様性コンピテンシー事業の功罪について個人的に話を聞くことができたとともに、今後の研究協力の可能性についても前向きな返事を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、当初の研究計画では日本とノルウェーの大学を訪問して調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス の感染拡大の影響により、6月現在の時点では海外調査については当面実施のめどが立たない状況となっている。 したがって、本年度は引き続き文献収集と分析を進め、特に教育政策について考察するとともに、調査予定先との連絡調整、データ収集方法と分析枠組みの検討を中心に研究を進める予定である。 ノルウェーは2020年8月から新カリキュラムに移行するため、新旧カリキュラムの比較分析や、カリキュラムの改正をめぐる議論について資料や情報の収集をおこなう。また、オンライン授業による実践内容への影響についても、現地教員にメールやzoomなどを用いて聞き取りする予定である。現地調査に行けない間、入手可能な資料の収集および分析を進め、その結果をもとに政策分析関係の論文を執筆することを考えている。 日本国内の調査については、新型コロナウイルス感染拡大状況を注視しつつ、調査方法や感染対策等を熟慮した上でできる範囲で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月に参加を予定していたComparative and International Education Societyのマイアミ大会が新型コロナウイルスの感染拡大の影響でオンライン開催となり、旅費の大部分が未使用となったため。 2020年度も海外調査や国際学会の出席の可能性については不透明であるため、2020年度は文献調査を中心とし、旅費については2021年に使用することを考えている。
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