研究課題/領域番号 |
19K14125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北山 夕華 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30547790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シティズンシップ / 多文化 / ノルウェー / マイノリティ教員 / ケアの倫理 / 多様性 |
研究実績の概要 |
昨年度から引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現地調査を行うことが困難となった。そのため、今年度は文献の収集と分析およびこれまでに実施した調査のデータ整理と分析を中心とした活動になった。 現地の学校は、規制の緩い順にグリーン・イエロー・レッドの「信号機モデル」を採用し、感染状況が深刻な地域では「レッド」が適用されオンライン授業中心となった。そうした現地の学校のコロナ禍対応についても、政策の変遷を追うとともに、オンラインインタビューなどを通じて調査を実施した。 文献収集については、北欧と日本の教育と文化的多様性に関するもの、シティズンシップの政治学的・社会学的理論に関するもの、教員養成に関するものを中心に収集した。また、ノルウェーの新ナショナル・カリキュラムを入手し、分析した。 執筆活動としては、収集済みのデータと文献をもとに、(1)マイノリティ教員 (2)エスニック・コミュニティの文化資源 (3)シティズンシップ教育におけるリベラルな正義論とケアの倫理の適用 について英語論文を執筆・査読つき論文として投稿し、いずれも掲載が決定した。また、ノルウェーの教員養成についての論文を執筆し、現在投稿準備中である。加えて、多文化社会における教員養成プログラムに注目した日本とノルウェーの比較研究の学術書の出版に向け、原稿を準備している。 学会発表は、シティズンシップ教育における正義論とケアの倫理について、World Educational Research Associationの大会で発表した。また、シティズンシップ教育が日本においてどう受容されたかという視点から、「ダイバーシティ」に着目して論じたものを日本社会科教育学会第70回全国大会で、社会構造への視点に注目して分析したものを国際セミナーDiscourse and Politics of Citizenship Education(オンライン)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査は2019年度に実施して以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により追加調査が実施できていない。また、日本の教育現場における調査も遅延している。したがって、フィールド調査活動については停滞していると言わざるを得ない。 本年度は、オンラインでの調査や情報収集活動が中心となった。例えば、就学年齢の子どものいるノルウェーの保護者にオンラインインタビューを行ったり、オスロにある欧州評議会の教育研究センターであるEuropean Wergeland Centreのオンラインセミナーに出席したりした。 本年度は、既に収集したデータの整理と分析、文献調査、学会発表と論文執筆を中心とした研究活動となった。研究活動の多くを分析と執筆に割いた結果、英語論文三編の掲載が決定した。また、日本語論文一本が投稿中である。したがって、研究成果の発表については順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年5月現在、ノルウェーでは新型コロナウイルス感染防止のための各規制がほぼ全面的に撤廃され、教育機関の活動も通常どおりに戻っている。しかし、情勢はまだ流動的なこともあり、現地調査を実施するかどうかは2022上半期の状況を見て決めたいと考えている。 研究成果の発表としては、ノルウェーと日本で行った教員養成課程の学生および教師教育者を対象とした調査データをもとに、それぞれ英語論文を執筆し、国際学術誌に投稿する予定である。 コロナ禍におけるノルウェーの教育機関の対応についても調査を継続し、論文として発表したいと考えている。 また、来日が延期していたサウスイースタンノルウェー大学のオスラー教授を2022年9月に招聘研究員として受け入れ予定である。その際、共同研究や共同執筆に向けての打ち合わせや、国際セミナーを実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ノルウェーでの現地調査ができず、発表した国際学会・国際学会も全てオンライン参加となったことから、旅費が未使用となったため。
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