研究課題/領域番号 |
19K14127
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関口 洋平 広島大学, 教育開発国際協力研究センター, 研究員 (90753640)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ベトナム / 高等教育 / 私塾大学 / 正統性 |
研究実績の概要 |
本研究は、急速に市場化が進んできているベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)に焦点をあて、企業的特徴をもつ新たな民営大学である私塾大学の社会との関連性とその実態について検討することで、社会主義国ベトナムにおいて私塾大学が正統性を獲得しようとするメカニズムを実証的に明らかにすることを目的とするものである。こうした研究目的のもと、令和元年度(1年度目)は以下の3点を中心に研究を実施した。具体的な内容について述べれば次のようになる。第1に、私塾大学を受容する「社会」の変容という視点から、現地調査(2019年6~7月、9月、10月、12月)を通じてベトナム教育科学院附属図書館、ハノイ市の書店、古書店などにおいて文献を渉猟し、『教育科学雑誌』をはじめ私塾大学と社会の関連性について切り込む論考を収集した。第2に、ベトナム高等教育システムに関する検討として、2019年7月にベトナム教育科学院高等教育局での高等教育制度に関する聞き取り調査を実施するとともに、2019年9月には高等教育へと接続する中等教育段階での教育改革についても農村部の基礎中学校において校長、教員を対象に聞き取り調査を実施した。そして第3に、ベトナムにおける私塾大学の実態の検討として、まず質問紙における質問事項の内容等についてメールを通じて企業設置型大学であるFPT大学の教員から意見をもらい、修正をしたうえで、2019年10月に同大学において情報技術または日本語を専攻する学生を対象として、並びに、2019年12月に民立大学から類型転換した私塾大学であるタンロン大学において情報技術または日本語を専攻する学生を対象として質問紙調査を実施した。質問紙調査では、これらの私塾大学で学ぶ学生の民族のタイプ、社会的属性、就学動機、就職希望先等について情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究目的のもと、本研究では大きく、①私塾大学を受容するベトナム社会の変容について検討するとともに、②正統性の獲得に向けた私塾大学の実態について教育研究活動の内容や在籍学生の社会的属性、就職状況など多角的な検討をおこなうことを計画した。そのうえで令和元年度(1年度目)は主として全体的な考察をおこなうための資料・素材の収集とその検討をおこなうことをねらいとしたため、研究実績の概要において記載した1年目の実績はほぼ所期の研究計画を達成していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、本研究計画の最終年度にあたる2年目では、これまですでに収集した文献・資料に加えて、インターネット上の閲覧が可能な教育訓練部機関誌『教育雑誌』や「社会化」政策に関する政府文書の検討を通じて私塾大学の受容に至った「社会」の変容について検討を進める。同時に、すでに収集した学生の質問紙調査の結果を集計と分析を進める。なお、追加の調査や分析の結果現地の大学教員による確認が必要となる場合には、FPT大学及びタンロン大学ともに連絡を密にとっているカウンターパートに協力を依頼する。そのうえで、こうした分析の結果得られた成果と先行研究の検討より抽出した中国の民営高等教育のモデルとを突き合わせることで、ベトナム民営高等教育の特質を析出する。
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