従来、ベトナム高等教育に関する研究は主として制度的側面に着目しており、そこでは学生の意識や「声」に配慮するというような高等教育の受容者の実態に関する視点が欠如していた。本研究では、私塾大学の正統性と社会受容という観点から、首都ハノイの主要な私塾大学を対象に学生の就学実態を分析することで、企業設置型の私塾大学は市場に親和的な大学としてベトナム社会に受容されているとともに、民族的多数派のキン族を中心に富裕層の子弟がより多く就学している実態を明らかにした。民営高等教育の実態に切り込み、民族間における高等教育格差の存在を示唆した点に本研究の学術的意義が認められる。
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