研究課題/領域番号 |
19K14135
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研究機関 | LEC東京リーガルマインド大学院大学 |
研究代表者 |
劉 昊 LEC東京リーガルマインド大学院大学, 高度専門職研究科, 講師 (80808220)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニューカマー / 中国系ニューカマー / 進路意識 / 将来展望 / 国家間移動 / 地域移動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、在日中国系ニューカマー青年の進路意識を国家間移動と地域移動の双方から検討することである。そのために、進路選択をする際に、日本国内で地域移動を行った者と国家間移動を行った者を対象にインタビュー調査を行った。2019年度は、合計10名に聞き取り調査を行うことができた。内訳は、日本で大学に進学した者6名、中国の大学に進学した者4名である。 進路選択を考える際、大学進学は重要なポイントとなるが、大学進学に際しては国内にしろ国外にしろ移動を伴うことが多い。そこで、進学先、すなわち移動先がかれらにとってどのような「場所」として意味づけられているのかを、地域移動を経験した者を中心に検討した。具体的な検討結果は以下のとおりである。 まず、進学先における重要な経験としてかれらが語ったのは、①留学経験によるルーツの肯定、②ルーツ観光による将来の方向づけ、③現実直視による将来展望の限定化の3点である。これらの語りから、次の2点を結論として整理した。第1に、「大学の補完性」である。先行研究では、学校を補完する場所として、宗教施設や地域の学習室の重要性が指摘されてきたが、全ての者がそうした資源を獲得できるとは限らない。しかし、その場合でも、大学における諸経験がルーツに対する自己肯定感を取り戻させたり、将来展望を多様なものにする可能性がある。第2に、かれらの進路の物語の修正性を「大学ならではの学び」と関連させて理解することである。先行研究では、ニューカマーの子どもたちが育ちの過程で、将来展望や進路意識を「自分の物語」として語り直していく様子が描かれてきた。本研究の調査対象者たちも、大学ならではの経験をもとに、将来展望を自分の物語として語り直していた点が明らかになった。 以上の調査結果を論文として日本国際教育学会に投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、日本と中国の双方で調査を行う必要がある。しかしながら、新型コロナウィルスの影響で、予定していた中国での調査を実施できなかった。また、2020年2月~3月に予定していた国内調査も中断せざるを得なかった。 一方で、国内調査では、中国系ニューカマー10人に対して聞き取りを行うことができた。そこで得たデータをもとに、概要でも触れた「大学における経験」に関する論文を日本国際教育学会に投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要のとおり、引き続き日本国内で地域移動を経験した者と国家間移動を経験した者への聞き取り調査をお行う予定である。概要で示したように、2019年度は、かれらの大学における経験を描いたが、日本の大学に進学した者にのみしか言及できなかった。2020年度は、中国の大学に進学した者に対する聞き取り調査をさらに増やす予定である。 また、誰が地域移動が経験し、誰が国家間移動をするのかという、移動の要因にも着目して調査を進める予定である。しかし、いずれの調査も新型コロナウィルスがある程度落ち着かないと実施困難なため研究期間の延長も視野に入れている状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月~3月に中国での調査を予定していたが、新型コロナウィルスの影響で実施できなかった。 そのため、旅費や人件費に充当する予定の金額が次年度使用額として発生した。
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