研究実績の概要 |
最終年度である2022年度は、新型コロナの終息を見据え中国での調査を予定したが、中国全土におけるパンデミックにより、調査を行うことができなかった。また、それに関連して国内における調査も順調とはいえず、研究開始当初に設定した目的を十分に達成することはできなかった。 一方で、2022年度も中国系第2世代6名に対するインタビュー調査を行うことができた。そして、進路選択時におけるかれらの日本国内での地域移動を「可動性の程度」(バウマン, 2010)に注目して分析した。その結果、五十嵐(2018)が指摘する、親が保有する文化資本や社会関係資本の影響が本研究でも明らかになった。具体的には、親がどのような資本を保有しているのかによって、調査対象者が移動を伴う進学を行うのかどうかが影響されることがわかった。 また、予算に余剰が出たため、関連する研究も行なった。具体的には、オートエスノグラフィーの手法を用いて、エスニック事業所における自身の経験を振り返った。その結果、エスニックビジネス事業所は、先行研究で指摘されてきたような「学びの場」としてのポジティブな面に加え、「ルーツに対する不信感」などのネガティブな側面も孕む場であることが明らかになった。そのうえで、エスニックビジネス事業所がもつ「場の両義性」の重要性を指摘した。なお、本研究は、中国社会科学院発行の『国際社会科学雑誌』に講演録として掲載されることが決まっており、その原稿校正代として、一部予算計上した。
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