「ニュー・アカデミズム」の学際性に関する知識社会学的研究

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K14137
• 研究機関: 名古屋女子大学
• 研究代表者: 佐々木 基裕 名古屋女子大学, 文学部, 講師 (90780560)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 現代思想 / ニュー・アカデミズム / 知識社会学 / 学際性

研究実績の概要

本研究は、日本の人文・社会科学における「学際性」の事例として「ニュー・アカデミズム」現象に着目し、大学大衆化状況以後の日本の学術知およびその背景としての学術界の構造についての検討を目的としている。研究の実施にあたって３つのアプローチを採用しており、以下順に今年度の成果を報告する。
アカデミズムにおける「現代思想」受容およびアカデミック・ジャーナリズムにおける「現代思想」受容については、２つのアプローチをリンクさせ、教育学と「現代思想」とのかかわりに焦点を絞った研究を進めた。具体的には、『現代思想』（青土社）の教育関連特集号を収集し、論文テーマ・執筆者の専門領域・所属・引用文献についての調査を行った。その上で、教育関連特集号掲載論文の学術雑誌における被引用状況と、執筆者の学術雑誌における執筆状況について調査を行った。本研究の目的に鑑み、2010年代から遡って調査を行った。後者の調査については、本年度は『教育学研究』などの主要学会誌に絞ったが、調査対象雑誌の範囲設定が調査の期間および充実度と関係するため、範囲を拡大すべきか考慮中である。
「ニュー・アカデミズム」における研究者のメディア戦略の検討については、上記2アプローチの知見の上に成り立つため、今年度は別の方法を検討し、研究者のメディア戦略を支える編集者についての調査を行った。『現代思想』（青土社）の初代編集長である中野幹隆に焦点を当て、中野が編集に関わった雑誌の収集や、塩尻市立図書館への出張調査を行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね問題なく研究を進めている。今年度がデータベース構築などの基礎的な作業が中心となったため、論文執筆や学会発表などの成果については、来年度以降の報告を予定している。

今後の研究の推進方策

『現代思想』の教育学特集についての調査は、翌年度も時期を遡って継続調査を予定している。
また1980年代のセゾングループとニュー・アカデミズムの関係についても調査も行いたいが、新型コロナの影響により出張調査の制限が予想されるため、オンラインで利用可能な学会誌・学術雑誌の調査が中心となる可能性が高い。

次年度使用額が生じた理由

学会誌・学術雑誌の出張資料調査について、論文のオンライン化の進捗や、研究範囲を教育学関連に絞ったことにより、出張の必要回数が減少した。また謝金を用いたデータベース整理作業も本年度は発生しなかった。
次年度にセゾングループに関わる出張調査を組み込むため、その出張旅費として充当する。