本科研の目的は、日本の教員給与システムを地域間格差、人件費の総額、労働問題研究等の視点から多角的に検証し、教員給与施策の構造と課題を明らかにすることであった。最終年度においては、これまで行ってきた国内文献研究レビュー、47都道府県ならびに20政令指定都市の実態分析(アンケート結果の再分析等を含む)を総合的に行った。今後の教員給与政策に関しては、①自治体ごとの調査、②教員という職の位置づけ(職としての身分)の検討、③教員の労働者性といった視点からの検討が必要であることが再確認された。 本科研における研究成果全体については以下の点が明らかとなった。地方分権改革によって都道府県の教員給与費の水準が維持できるのかという課題については、2017年度の都道府県から政令指定都市への教職員給与移管の際も教員の給与に関しては、都道府県時の水準が維持されている自治体が大半であった。一方で、事務職員は都道府県時の水準とは別の観点からの給料表作成の実態があった。複数の職と比較して教員給与が適切か否かの課題については、本科研では給与額に着目した検討は行った。一方で、教員の身分(地位)の検討が必要であり、その点は今後の課題とすることとした。最終年度として現時点で明らかにできる(今後、本科研も含めた研究結果については書籍化等の公表を想定している)調査結果を暫定版として報告書を作成した。 なお、今後の研究の展開については、本科研の中でも教員給与だけでなく、学校事務職員や学校に関わる他の職の給与との検討ならびに公立義務教育諸学校のみを対象とするのではなく、高等学校や場合によっては国立大学法人の教職員給与を視野に入れる必要性が明らかとなった。この点については、「義務教育諸学校と高等学校における教職員の給与システムと労働条件に関する展望研究」で継続的な検討を行うこととする。
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