最終年度に当たる令和4年度は、補足調査を実施しそれまでの成果を学会発表・論文投稿しつつ、本研究全体の知見をまとめることを目的とした。 本研究では前年度までに児童養護施設職員と保護者との交流の観点から施設における文化や支援の構築を考察し、家庭の文脈をふまえた施設職員の家族関係の再構築実践を明らかにしてきた。令和4年度は、こうした実践が措置された子どもの年齢や発達によって左右されている現状を、子どもの進路問題を焦点として示した。この成果は『至誠館大学研究紀要』第10巻に投稿し、掲載されている。また、こうした知見をふまえて児童養護施設での養育の現状を九州教育社会学会の研究会で発表している。 以上の成果により、本研究では、児童養護施設の支援実践における職員と保護者の交流の実際を示した。施設では、保護者に対して子どもの「甘え」を受け止めるような変化を期待しているが、それが保護者の期待とは異なり、職員と保護者のすれ違いが生じていた。さらに、施設職員の実践を大きく左右するものとして、「措置の時期」を挙げた。つまり、子どもが比較的早い時期に一時保護されたのか、中学生や高校生になるまで家庭で過ごしていたのかによって、子どもと家族との関係は課題の質が異なる傾向があり、したがって施設職員の支援も様相や悩みが変化していた。 このように本研究は、児童養護施設職員の家庭支援を詳細に明らかにするものである。本研究の意義は、施設職員が家庭支援において保護者に何を伝えようとしているのか、その一端を具体化し示したことである。また、そうした職員のねらいがどのように困難となるのかも示した。この研究成果は、今後の児童養護施設における家庭支援実践の議論を深めるとともに、支援の困難への理解を促進させるものである。
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