研究課題/領域番号 |
19K14145
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研究機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター) |
研究代表者 |
坪田 光平 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 助教 (30735931)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エスニシティ / 中国系移民第二世代 / 学業達成 / 配偶者選択 / エスニック文化 / 差別 / タイガーマザー |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、親の出身階層や渡日経緯に多様性が見られる日本の中国系移民第二世代の集団内比較を行うことである。2019年度は新規インタビューの実施、また計54名の中国系移民第二世代を横断的に分析した結果を学会報告した。具体的には、中国系移民第二世代の配偶者選択の志向性を定量的・定性的な側面から検討するとともに、学業達成ならびにアイデンティティとの関連についても考察した。 第一に、配偶者選択の志向性を多変量解析により検討した結果、親世代の渡日経緯や人的資本にかかわらず、配偶者選択に注力する「親の介入的姿勢」の影響が明らかになった。この介入的姿勢は「中国人との結婚を強く勧める」親の意向を意味するものであり、この影響下にさらされてきた第二世代ほど親の期待を引き受ける、エスニックな同類婚志向を形成していたことが明らかになった。第二に、定性的な分析を通じて、エスニックな同類婚の形成過程には少なくとも二つのパターンが存在することが明らかになった。ひとつは、ホスト社会で経験する差別を背景に強固なエスニック・プライドを抱き、学業達成ルートからの撤退と日本人に対する忌避感を背景にした「エスニック文化遵守型」、ふたつは、大学進学をたどりハイブリッドなアイデンティティを遂げながらも、不十分な適応状況にある親世代の老後と生活保障を考慮した「エスニック文化復権型」である。これらの知見は、とりわけ中国系移民家族を取り巻く差別や親の適応状況が、第二世代の学業達成やアイデンティティパターンにかかわらず、配偶者選択の志向性に影響を及ぼすことを示唆している。以上の知見は、日本教育社会学会にて報告するとともに論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は文献研究を通じた知見の整理と新規インタビュー項目の作成を予定していたが、新規インタビューを2件行うことができた。また、学会報告を2件行い、成果の一部が査読付論文として採択されたという点でも当初の計画はおおむね達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、インタビュー調査を重点的に行う予定としている。ただし、新型コロナウイルスの影響を考慮する必要があるため、インタビュー調査はインフォーマントとのやりとりや国内状況を踏まえながら慎重に行うこととする。また、学会報告した定性的分析の結果については論文にまとめて投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の通り、文献の収集を中心に助成金を使用した。2千円程度の残額が生じたのは、物品購入には十分ではなかったためである。
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