研究課題/領域番号 |
19K14145
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研究機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター) |
研究代表者 |
坪田 光平 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 助教 (30735931)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / 追跡調査 / コロナ禍 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本年度の研究業績は三点に集約される。 第一に、これまで実施したインタビューデータの分析を深め、共著図書を刊行した。アイデンティティ、学校経験、トランスナショナリズムに加え、新規でジェンダーや量的分析を行った。来日経緯だけでなく出身階層に多様性のある中国系移民第二世代やその家族の姿を可能な限り提示することで、中国系移民に向けられがちなステレオタイプの相対化を目指した。この過程で、とくに農村部出身の家族に育つ移民第二世代女性ほど、学齢期における通訳や、早期就労・早期結婚を向けられることが明らかになり、階層とジェンダーの視角から移民第二世代のライフコースを検討する必要性を提起した。 第二に、オンラインによる非対面でのインタビュー調査を取り入れることで、過去にアクセスした調査対象者に追跡調査を実施することができた。現在継続中であるものの、過去の調査時点から5~6年後となる追跡調査を通じて、多くの調査対象者には就労への移行がみられる。このことから、とくに出身階層や教育達成を考慮し、労働市場への移行過程やエスニシティへの意味付けに与える影響について分析を進めている。 第三に、コロナ禍の影響によりフィールド調査が困難であったため、東北地方における移民支援団体に視点を移し、とくに秋田県における移民女性支援とその成立過程にかかわる民間・行政発行の歴史資料を網羅的に収集することができた。その成果の一部は、翌年度に共編著書として出版予定である。加えて、福島県でのフィールド開拓も行い、女性にまつわる歴史資料を網羅的に収集した。なお、その成果は学会での共同発表としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度もコロナ禍によって予定していた海外調査を実施することはできなかったが、オンラインを通したデータ収集や新規のフィールド調査に着手することで新たな知見を共著書や学会発表にまとめることができた。また、その過程で福島県のフィールドを新たに開拓できたことから、東日本大震災を射程に入れた仮説の生成と研究構想をより深めることもできたため。
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今後の研究の推進方策 |
中国系移民第二世代の集団内比較を進めるため、以下の作業を進める。 ①継続的なオンラインでの追跡調査を行う。対面でのインタビュー調査は引き続き困難になると予想されるため、オンラインでのインタビュー調査を引き続き行うとともに、スノーボールサンプリングによって調査協力者を増やすことを目標にする。 ②収集したインタビューデータから、移民第二世代の労働市場への移行やそのプロセス、さらにコロナ禍の影響を分析する。とくに大学進学とそれ以外とで初職達成のプロセスやエスニシティの影響は異なると想定される。語りにおけるコロナ禍の影響を射程に入れながら、仮説の生成と分析をインテンシブに行い、その成果を学会発表によってまとめる。 ③移民支援団体にかかわるフィールド調査の継続。コロナ禍による行動制限とかかわるものの、秋田県や福島県における継続的なフィールド調査を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、2020年度に続き、コロナ禍により対面でのインタビュー調査が困難となり、必要な旅費が計上できずにいたため。また、所属機関は東京にあるため、新型コロナウイルス感染拡大を防止する観点からも、長期出張は困難であり、海外を含むフィールド調査は断念せざるを得なかった。 一方、オンラインによるインタビュー調査の実施や、移民支援にかかる資料調査で秋田県や福島県へとフィールドを新規開拓できたことから、資料撮影にかかる機材や備品購入、調査旅費として重点的に使用する予定である。
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