研究課題/領域番号 |
19K14147
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳 奈津代 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (40837499)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 与薬 / 保育所 / 連携 / 保育士 / 薬剤師 / 保護者 / 保育園児 |
研究実績の概要 |
保育所で園児に薬を服用させること(与薬)が、現場の保育士に負担となっていることや、適切でない与薬の事例が報告されてきたことから、地域の人々の健康をサポートする薬局薬剤師による与薬支援の可能性について検討を行っている。 保育園児をもつ母親へのインターネット調査と、東京都内の保育施設への郵送調査を実施した。申請者らの調査によっても、保育所での与薬を主に行っているのは、園児の担当保育士であり、適切でない与薬の実態や、現場保育士への与薬の負担がみられた。看護職不在の施設もあり、薬局薬剤師による与薬や健康への支援が期待されていることが明らかとなった。保護者においては、保育所での与薬に感謝し、申し訳ないと感じているものの、与薬は保育士の仕事である、もっと与薬してほしいという母親の思いも、一部にみられた。また、母親の与薬アドヒアランスには、薬の一般的な知識、かかりつけ薬局や薬剤師の関わりが関連していた。これらの結果について、国内外の学会で発表を行った。 保育所を利用する子どもが増加する中、どうしても保育所で薬を飲まなければならない子どもたちにとって、適正な与薬は不可欠である。できるだけ保育士の負担を減らすには、薬の情報や取り扱いに関わる薬学的支援のほか、回避できる与薬は保育所に依頼しないなど、保護者の理解や医師の協力も必要である。保育所での与薬の適正化には、薬局薬剤師が職能を活かし、保育士と保護者の両者に関わることが期待される。 本研究では、保育士、保護者、医師、薬剤師の連携を踏まえ、薬局薬剤師の具体的な支援を提案する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保育所での与薬の現状を把握し、薬局薬剤師の支援の可能性を探るため、2019年度は保護者と保育施設に対してアンケートを実施した。 保育園児をもつ母親600名へのオンライン調査を実施し、母親からみた保育所における与薬の実態、与薬アドヒアランスや与薬に関する意見などを収集し,保育所での適切でない与薬や、母親の与薬に対する意識などが明らかとなった。また、東京都内の認可保育所・認証保育所(3727施設)に郵送調査を依頼し、1535施設より回答を得た。保育所での与薬の実態、与薬に関する負担や考えなどについて、かなり詳細な記述がされており、保育職員の感じる問題点や課題、薬剤師に期待する支援についての解析も可能であった。 保育所での与薬の実態を把握し、薬剤師による支援の可能性についての検討を行っていることから、おおむね順調であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目は、保育職員、薬剤師、保護者が参加する多職種ワークショップによって、保育所での与薬支援の可能性を具体化し、サポートシステムの構築を予定していた。しかし、今年度は大人数でのワークショップ開催が難しくなったことから、これまでの調査結果をもとに、保育園児の投薬に関わる薬剤師と、与薬経験のある保育職員に、与薬支援に関する具体的なアンケートを実施し、サポートシステムを構築・提案する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していた保育士へのアンケート調査を2020年度に実施する。
|