研究課題/領域番号 |
19K14148
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
伊原 小百合 東京藝術大学, 音楽学部, 助手 (50837490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音楽教育 / 保育 / 楽器 / 探索 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼児の主体的な探索を促し、且つその身体的発達に相応しい楽器の特性とは何かを明らかにし、保育現場での楽器を用いた実践に具体的な提言をすることである。ここでの探索とは、研究内容は(1)幼稚園(東京都内)にて、自由遊びの時間に楽器で遊ぶ幼児の行為を観察する、(2)太鼓を叩く幼児の手の動きを分析する、(3)(1)と(2)で得られたデータの解釈と環境構成についての提言を図ることの3点である。本年度は(1)と(2)を行った。(1)では、幼稚園にて自由遊びの時間に小型の打楽器類を配置し、幼児がどのようにそれらの楽器で遊ぶかを観察した。本年度は年間で12回の参与観察を行った。対象とする学年は、園のスケジュールにより各回で異なった。この参与観察は研究期間中継続して行う予定であり、今後は各楽器や年齢による遊び方の違いを明らかにしていく。また(2)は本年度2回の測定を予定していたが、1回のみの実施となった(進捗状況を参照)。教室内に、スタンドの上に設置した通常サイズのジャンベを配置し、モーションキャプチャシステム(Microsoft社製、Kinect)を用いて、ジャンベの面を叩く際の幼児の手の動きを測定した(幼児の身長を考慮した楽器の位置等の測定環境については、実施前に別環境にてテスト測定を行った)。機材はマーカーレスであるため、幼児の動きの自由度が保持されるだけでなく、保育現場に適した自然な環境構成を実現できる。楽器とかかわる幼児の動きを定量的にも測定することで、幼児の行為を多角的に捉え、幼児期の発達に見合う楽器とその環境構成の在り方について、信頼性の高い提案が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上述の通り、幼稚園における参与観察(計12回)と、モーションキャプチャシステムを用いた動きの測定(計1回)を行った。現在は得られたデータから主に、年齢による楽器とのかかわり方の違いや、各楽器の特性が幼児の遊び方とどのようにかかわっているかについて整理・検討している。モーションキャプチャシステムを用いた測定は年間で2回を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で3月以降は幼稚園が休園となり、本年度末に予定していた実施が叶わず、1回のみの測定となった。また参与観察においても、3月中に予定していたものは実施が不可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響により、幼稚園の休園が継続しているため、参与観察及びモーションキャプチャシステムによる測定共に研究再開の目途が立っていない。状況に配慮しながら研究を進めていくことになるため、研究に遅れが生じる可能性がある。幼稚園の再開までは、得られたデータの整理・構造化に尽力したい。次年度からは楽器の種類を数種類増やしたり、探索が発展しなかった楽器を除いたりすることによって、幼児期の探索をより多面的に明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度2月以降に予定していた測定や学会等が、新型コロナウイルスの影響で全て中止になったことで、次年度使用が生じた。次年度以降、研究再開の目途が立った段階で、本年度分の測定を改めて実施予定である。翌年度は新たな楽器の購入、測定に際する研究協力者への交通費・謝金、学会等への参加費が主な支出となる予定である。
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