本研究の目的は、(1)幼児の主体的な探索を促し、且つその身体的発達に相応しい楽器の特性について明らかにすること、(2)(1)の結果を踏まえ、保育現場における楽器の実践に関して、楽器の選択や配置等の環境構成の観点から具体的な提言をすることである。研究手法は、幼稚園でのフィールドワークと、幼児が太鼓を叩く際の手の動きの分析が中心となる。筆者はこれまでの自身の研究から、幼児は音を想像して身体をコントロールし、予期的に身体を動かす能力を獲得していくのではないかという仮説を得ているが(伊原 2021)幼児期の手の発達に関する研究は少ない(Pehoski 2010ほか)。本研究は、太鼓を叩く幼児の手の動きに焦点化し、微細な視点から幼児の叩き方を分析することで、楽器にかかわる幼児の発達過程を明らかにしようとするものである。 2023年度は、幼児の手の動きの測定を1回実施した。実施環境は前年度までと同様である。本年度はデータ分析研究会を定期的に実施し、結果を報告としてまとめることに専念した。これまでに収集した年少児・年中児・年長児のデータを横断的に検討し、また予備的実践として行っていた大人のデータとも比較しながら、特に年齢による動きの違いについて検討した。
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