研究課題/領域番号 |
19K14151
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
水津 幸恵 三重大学, 教育学部, 講師 (30837331)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳幼児 / 道徳性 / 生活 / 倉橋惣三 / ノディングズ |
研究実績の概要 |
本研究では、道徳発達段階理論とは異なるケア論の立場から「段階(stage)」ではなく「生活(life)」において道徳性をとらえるネル・ノディングズのケアリング論と、ケアリング論との共通性が見出される倉橋惣三の「生活」を主軸に置いた保育思想に着目し、日々の生活における他者とのかかわり合いの中で既にさまざまに立ち現われている乳幼児期の道徳性をとらえる、新たな視点を提起することを目的とする。またこれを通して、倉橋惣三の保育思想を国際的な議論に位置づけることを試みる。以上の目的を達成するため、(1)倉橋惣三の保育思想とケアリング論の文献検討による思想研究と(2)子ども同士の対人葛藤のエピソード検討の2つの軸をもち、研究を進めている。本年度は、(1)については、倉橋惣三の保育思想とケアリング論に関する資料・文献収集およびその検討を中心に行い、両者がともに子どもを主体としてみる子ども観を共有しており、それゆえに教授的な道徳教育を批判し「確証」を重視していることが見出された。この成果はOMEP Asia Pacific Regional Conference 2019において発表した。(2)については、乳幼児期の日々の生活において道徳性とかかわる具体的な出来事として対人葛藤に着目してエピソード検討を行い、葛藤が和らいでいくプロセスについて明らかにした。この成果は共創学会の年次大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倉橋惣三の保育思想とノディングズのケアリング論の共通性について、国際学会で発表ができたことは、本年度の主要な成果であった。また、同学会においては、英文論文投稿ワークショップに参加し、本成果を国際学会誌に論文として発信するための有益な情報を得ることができた。また、乳幼児の道徳を具体的に検討する上で重要となる対人葛藤に関するエピソードの検討についても、学会発表を通して新たな示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、本年度の学会発表における成果を論文として発表することを目標とする。また、(1)倉橋惣三の保育思想とケアリング論の文献検討による思想研究と(2)子ども同士の対人葛藤のエピソード検討の2軸の成果を交差させ、子どもの具体的な姿と結びつけた思想研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定の学会および研究会が感染症対策のため開催中止となり、旅費が不要になったため。次年度使用額は、本年度購入できなかった必要書籍等の購入にあてる。
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