研究課題/領域番号 |
19K14156
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
呂 小耘 帝京大学, 教育学部, 助教 (30813125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 絵本の読み聞かせ / 保育者の専門性 / 幼児と絵本の関わり / 質的研究 / 絵本選び / 絵本の貸し出し / 幼児同士のやりとり |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度中に行った観察及びインタビューで収集したデータを分析し、学会発表計2件を行い、論文1本を投稿し掲載になった。 発表1では、昨年度中に観察した5歳児クラスの幼児を対象とした1)絵本の貸し出し場面において幼児同士のやりとりの内容、2)9ヶ月にわたって幼児同士のやりとりの変容について学会発表1件を行った。その結果、絵本の貸し出し場面において幼児同士の多様なやりとりが自然に生起していたことが明らかになった。そして、9ヶ月にわたって、幼児同士のやりとりは次第に多く見られ、一方的な発話から応答的なやりとりへと変化したことが明らかになった。集団の場で他児と一緒に絵本を借りるという体験は、絵本と貸し出しその行為について他児と言語的なやりとりを楽しむ機会となると示唆される。 発表2では、一昨年と昨年度中に観察した経験年数の異なる保育者2名を対象とした1)同じ行事に向けて選んだ絵本と理由、2)当日の絵本の読み聞かせ場面の展開について学会発表1件を行った。その結果、経験年数が少ない保育者と比べて、経験年数が長い保育者は、絵本の主人公や他の登場人物、絵本のストーリーの流れ、さらに絵本の細かな内容まで理解し、多様な視点から総合的に絵本を選んでいたことが明らかになった。よって、保育者が 1 冊 1 冊の絵本に対する理解の深さは、「絵本選び」という専門性の要素に影響していると推察できる。そして、論文1は発表2に基づいて作成したものである。 また今年度は、昨年度幼稚園5歳児クラスを対象として、1)集団の絵本の読み聞かせ場面、2)幼児が昼食後自発的絵本と関わる場面を観察した記録の分析を進めている。一方、今年度は幼稚園・保育所の園長経験者を対象として、1)絵本の読み聞かせについての考え、2)絵本の選び方、3)絵本に関する考えの変容課程と変化のきっかけについての論文を作成中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は第1に、幼稚園の5歳児クラスで日々行われている絵本や物語の読み聞かせ場面を観察し、幼児はどのように聴いているか、保育者はどのように援助しているかを明らかにする。研究計画通り、1)集団の絵本の読み聞かせ場面、2)昨年度の参与観察で得られた幼児が自発的に絵本と関わる場面と絵本の貸し出し場面のデータを分析し、学会で成果を発表した。しかし、研究計画では、2020年度にも1園の5歳児クラスを1年間観察する予定だったが、コロナウイルスの感染拡大の影響で1年間継続に観察を行うことができず、経験年数が10年前後の保育者が持つ5歳児クラスの観察ができなかった。2021年度では、参与観察を再開する予定である。さらに、昨年度8月に国際学会の大会で発表する予定だったが、その大会が1年延期となり、2021年8月に発表する予定となった。そして第2に、本研究は読み聞かせ場面における保育者の専門性の定義並びに専門性の発達を促すサポート体制を、保育者の語りから明らかにする。研究計画通り、1)経験年数の異なる保育者を対象とするインタビューを行い、2)研究成果を学会と研究紀要に発表した。以上をもって、2020年度はやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)研究計画では、2020年度に1園の5歳児クラスを1年間観察する予定だったが、コロナウイルスの感染拡大の影響で1年間継続に観察を行うことができなかった。2021年度では、参与観察を再開する予定であり、協力園と相談済みである。 2)2019年度の参与観察で得られたデータの分析をさらに進める予定である。2019年度は幼稚園5歳児クラスを対象として、1)集団の絵本の読み聞かせ場面、2)幼児の自発的絵本と関わる場面、3)絵本の貸し出し場面を観察した。2020年度では、一部のデータを分析したが、2021年度では未分析の観察データの映像分析を進める。 3)2021年度では、これまで収集したデータをまとめ、研究の成果を発表する予定である。2021年5月、8月、9月と11月に4つの学会で発表を行う予定である。また、昨年度中に発表した内容、および2021年5月に発表した内容を整理し、2つの学術誌に投稿する。さらに、2022年度では、2021年8月、9月と11月に発表した内容を整理し、学術誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年2月から3月の人件費の支出において、研究補助の方と日程の調整を行ったため、次年度使用額が生じた。 2021年では、より計画的に人件費を支出する予定である。
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