今年度は、一昨年に行った観察及び昨年度に行ったインタビューで収集したデータを分析し、学会発表計3件を行った。 発表1では、一昨年に観察した5歳児クラスの幼児2名を対象として、幼児はどのように絵本を選んでいたかを検討した。その結果、2名の幼児は保育者が出した絵本の選ぶ範囲に従って選んでいるが、選ぶ際に友達と保育者とのやりとりが生じて、そのやりとりは最終の絵本選びに大きく影響することが明らかになった。また、2名とも絵本の背表紙・表紙・裏表紙や中身を確認しながら絵本を選んでいたが、実際に2名の幼児の絵本に対する好みが異なることが明らかになった。 発表2では、一昨年に観察した5歳児たちが昼食後の時間を使って、自発的に絵本と関わっている姿に着目し、一人で読む場合と幼児同士で読む場合の特徴及び時期的な変化を検討した。その結果、一人で読む場合、12月頃になると幼児たちがより集中して読むことが見られた。一方、幼児同士で読む場合、一緒に絵本のストーリーを楽しむ集団もあれば、単に同じ場にいたい、一緒にゲームを楽しみたいなど幼児の多様な楽しみ方が見られた。 発表3では、一昨年に観察した5歳児クラスの読み聞かせ場面に着目し,5歳児の反応及び保育者の援助の仕方を検討した。その結果、幼児は絵本の読み聞かせの「読前」「読みの過程」「読後」という3つの過程において異なる反応を示した。保育者は「読中」において幼児たちの反応に対応しないのが多かったが、「読前」と「読後」に幼児たちとより多く言葉で応答をしていたことが見られた。さらに、保育者の長期的な援助によって、12月から幼児たちは「読中」においてより集中して聴いていたことが示唆された。 また今年度は幼稚園・保育所の園長経験者を対象として、1)絵本の読み聞かせについての考え、2)絵本の読み聞かせに関する考えの変容のプロセスと変化のきっかけについての論文を作成中。
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