研究実績の概要 |
世界的な流行を受け、一時的に海外在留邦人数は減少傾向にあったものの、2022年度より再び増加の傾向にある。それに伴い海外に在留する子どもたちも増加傾向にあると考えられる。一般社団法人日本在外企業協会によると、家族帯同者数の年代別構成では 30 代と 40 代の子育て世代が全体の約 8 割を占めている。また帯同海外子女も乳幼児が約半数と、乳幼児の海外帯同も相変わらず多い状況である。しかしながら在外日本人家庭の子育ての現状や支援のためのニーズすら掴めておらず、また海外に住んでいることで、日本からの支援は行き届いていないのが現状である。 そこで今年度は、昨年度から継続しているパリ在住邦人家庭の乳幼児の子育てをしている邦人母親を取り巻く社会的環境と子育ての実態、およびその支援の課題について明らかにした論文を執筆し、学会誌に投稿、掲載された(パリ在住邦人家庭の子育ての実態と支援課題に関する探索的研究. 乳幼児教育学研究, 2022(31), 1-13)。保護者の語りは(1)子育てに関するフランス社会への肯定的な捉え,2)フランスでの子育てにおける不安・不満・困り感,3)言語的障壁による情報収集と利用の制限,4)パリに住む邦人家庭の子育て支援ニーズ)に構成されていた。これらの結果から、子育ての実態と子育てを取り巻く社会環境の現状として、①保護者自身の在住国の子育てを取り巻く社会・文化的な捉え,②言語的障壁と文化的障壁,③邦人母親として子育て、の3点が明らかになった。 さらに、パリ在住邦人家庭の子育てを支援する際、障害のある子どもとその保護者への支援をはずすことはできない。そこでパリ及びパリ近郊の邦人子女の通う日系幼稚園、日系障害児支援団体、現地障害児支援施設や現地教育機関を視察し、邦人の障害のある子どもへの制度や支援体制について、改めて情報交換を行う機会を得た。
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