研究課題/領域番号 |
19K14161
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
門松 愛 名古屋女子大学, 文学部, 講師 (60804119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保育者養成 / 専門性 / アジア / 子どもと関わる技術 / 保育理論 / モンテッソーリ |
研究実績の概要 |
本研究では、保育者に求められる専門性の文化的相違を子どもと関わる技術から明らかにすることを目的としている。そして、そのための着眼点として欧米諸国の保育理論の独自化に注目している。当該年度の研究実績として、次の3点を中心に成果を得た。 1点目は、比較対象としての日本における保育者に求められる専門性である。これについては、先行研究をもとに、日本の保育の理念と関連して多岐にわたって保育者の援助方法があることを整理し、日本においては欧米諸国の保育理論の導入はありながらも、倉橋惣三らによって日本化されていることを確認した。また、特に見守るという点について各国での相違がある可能性が高いという示唆を得た。 2点目は、モンテッソーリ教育の伝播の相違に関する知見である。これについては、欧米、日本では、当該社会で主流の保育・教育思想に対する抵抗感や適合といった点から批判や評価がおこなわれ、特に自由さや読み書き算への評価が異なっていたのに対し、ベトナムでは、しつけ、個性、独立心が注目され、現代の教育問題に対応した海外の新しい手段として、実践的に、一部では商品的な側面をもちながら、広がっていく様子が確認できた。 3点目は、研究対象国であるベトナムの幼児教育の歴史とカリキュラムの解明である。ベトナムの幼児教育では、ピアジェなどをはじめとする6つの理論が影響していること、また、ホーチミン思想においても保育が掲げられていることを明らかにした。加えて、保育者養成のカリキュラムについては、共産国としての特徴がみられる一方で、英語、算数、音楽など教化的な分類による授業科目が見られることも明らかとなった。 上記3点に示すように、欧米諸国の保育理論の独自化の様相を一部捉えることができた。このことは、保育者の専門性の文化的相違を捉え、日本においても保育者の専門性研究を深める点で意義があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、当該年度に研究対象国(バングラデシュ、タイ、ベトナム)の保育に関する基本情報を整理すること、バングラデシュ、ベトナムについて現地調査をおこなうことを目指していた。このうち、1点目の基本情報の整理については、概ね順調に進んでいる。一方で、2点目の現地調査に関しては、9月にバングラデシュの現地調査をおこなう予定であったが、現地調査協力者との調整がつかず、実施できなかった。また、3月にベトナムにおける現地調査を予定していたが、新型コロナウィルスの影響により、おこなうことができなくなった。そのため、バングラデシュについては、これまでの研究成果をまとめることで対応し、ベトナムについては、ベトナムの幼児教育研究に従事している大学研究者をご紹介いただき、ベトナムの幼児教育に関わる文献資料の発送を依頼しているところである。以上から、研究の進捗状況としては、やや遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、バングラデシュ、ベトナム、タイの3国を調査対象としていたが、新型コロナウィルスの影響を鑑みて、研究期間内に3国全ての調査を終了することは困難と考えられるため、調査対象とする国を限定していくことで対応をしていく。優先順位として、比較的幼児教育の研究が進んでおり、独自化が進んでいると考えられるベトナム、タイに注力していく予定である。まず、ベトナムについては、新型コロナウィルスの影響が収まるまでは、現地の研究者とメール等を用いて連絡を取り、『Early Childhood Pedagogy』をはじめとする教科書を入手し、文献研究を進める予定である。また、2021年3月頃においても現地調査が困難であると判断される場合においては、ベトナムの大学が開講している場合は、ビデオ録画等で現地の大学教員に研究協力を依頼する。ここから得た資料を分析することで、教科書分析と並行して、研究を進めていく。次に、タイについては、文献での情報収集の余地がまだあるため、まずは文献調査を基本として、引き続き幼児教育の歴史や現状に関する情報を蓄積していく。以上のように、今後の研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
9月に予定していたバングラデシュへの現地調査が、研究協力者との調整がつかず実施できなくなったこと、および、新型コロナウィルスの影響により、3月に予定していたベトナムにおける現地調査をおこなうことができなくなったため、外国旅費および現地調査協力者への謝金の支払いがなくなった。加えて、現地調査にて使用する予定であったビデオカメラ、デジタルカメラの物品購入についても、現地調査の中止にともなって購入を差し控えた。これらの現地調査については、今後実施予定であることから、次年度使用額が生じた。使用計画として、現地調査において必要な物品を翌年度分として購入するとともに、ベトナムにおける現地調査の外国旅費および研究協力者への謝金として、使用する計画である。
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