研究課題/領域番号 |
19K14161
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
門松 愛 名古屋女子大学, 文学部, 講師 (60804119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保育者養成 / 専門性 / アジア / 子どもと関わる技術 / 保育理論 / ベトナム / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
本研究では、保育者に求められる専門性の文化的相違を子どもと関わる技術から明らかにすることを目的としている。そして、そのための着眼点として欧米諸国の保育理論の独自化に注目している。当該年度の研究実績として、次の2点を中心に成果を得た。 1点目は、研究対象国であるベトナムの幼児教育教員養成課程における教授内容に関する知見である。具体的には、同国においては、子どもの能力獲得を補助するような「教育的コミュニケーション」が重視されていることが明らかになった。また、海外思想の導入として、「子ども中心」「統合教育(テーマ保育)」が2006年ころから展開されてきており、近年、特にその実施方法などの研究が国内で盛んになっていることが分かった。一方で、同国の文化的背景である社会主義的な側面に関連するものとして、教師に求められる社会主義的世界観や道徳観は変化がないこと、さらに、教育方法論においても旧ソ連の思想家・教育学者の方法論が重視されていることが明らかとなった。この点は、欧米諸国の保育理論の独自化を見出すうえで、注目すべき点である。 2点目は、もう1つの対象国であるバングラデシュの教員養成について、形式主義的な教員養成制度となっていることが示唆された。同国の政府主導の教員養成プログラムの分析を再度おこない、また、過去の調査内容に基づいて、教員養成に対する各アクターの実態や考え方を抽出した。結果として、教員に対して就学前教育としての専門性が求められていないこと、また、子ども中心などの理念は導入されているが、養成としては実践力を重視し、子どもと関わる技術よりもカリキュラム通りに実践できることがまずは重視されていることが明らかとなった。 上記2点から示される通り、欧米諸国の保育理論の導入があること、そこからの各国での土着化の様相を一部明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、当該年度に研究対象国であるバングラデシュ、ベトナムについて資料を収集し、子どもと関わる技術の教授内容及び教授方法について精査することを目指していた。この点については、コロナ禍で現地調査ができないという制約はあるものの、文献資料やオンラインでのインタビュー調査などを実施してきたため、今年度の研究実績に記した通り、おおむね順調に進んでいる。一方で、研究対象国の1つであるタイに関しては、コロナ禍により現地調査ができない状況が続いており、当初の計画からは遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、バングラデシュ、ベトナム、タイの3国を対象としおり、昨年度はベトナムとタイに対象国を限定することを想定していたが、コロナ禍の継続を鑑みると、これまで現地調査の実績がないタイについては、研究対象国として継続していくことは困難と思われる。そのため、今後は、バングラデシュとベトナムに研究対象国を絞り研究を進めていく。両国については、今後も現地調査が困難であると考えられるが、すでに入手している資料の分析を精査におこなうと同時に、現地の研究協力者の協力を得て新たなデータをオンラインまたは郵送等で入手し、研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
9月、3月に予定していたタイへの現地調査が、新型コロナウイルスの影響によりできなくなったことにより、当初予定していた旅費の支払いがなくなった。加えて、現地調査による研究協力者への謝金の支払いも生じなかった。これらの現地調査については、今後、コロナ禍の状況に応じて実施していく予定であるため、次年度使用額が生じた。使用計画として、ベトナムにおける現地調査の外国旅費および研究協力者への謝金として使用することに加え、今後入手していくベトナム語やベンガル語資料の翻訳への協力金として使用する計画である。
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