研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorders:ASD)の有病率は1%(U.S.Centers for Disease Control and Prevention, 2006)とも言われ、その疾病機序の解明及び早期発見は我が国でも喫緊の課題である。特にASDの早期発見は、ASD児本人への適切な支援という観点からも極めて重要な問題である。さらに、ASDの早期発見は、的確な情報周知による二次障害防止にもつながる。我が国では現在、養育者への聞き取り調査に基づく質問紙調査が主流であり、実施による一定の効果があげられている。しかし、質問紙による診断は、①主観的判断基準の影響を受けやすく、②診断可能な月齢が遅い、という問題が挙げられる。したがって、より①客観的かつ②早期に実施可能な診断方法の確立が急務である。以上の研究背景をもとに本研究では、客観的指標の候補として考えられるBiological Motionに対する注視パターンとASDの関連を明らかにすることを目的とした。研究では、選好注視法を用いた心理学実験により、Biological Motionに対する注視パターンを測定した。また、既存の質問紙法によるASD指標の測定を行った。本研究の結果、倒立及び正立のBiological Motionに対する視線パターン(注視時間等)に有意差は見られなかった。一方、質問紙により算出された自閉症スペクトラム障害・二次障害・他の発達障害の合併スコアと視線パターンの相関分析の結果、12名サンプルの時点では相関の傾向が見られている。引き続き追加データ収集及び解析を行い、ASDと視線パターンの関連性を明らかにすることを予定している。
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