研究課題/領域番号 |
19K14172
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山岡 祐衣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (20726351)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心理社会的発達 / 逆境体験 / 心理社会的発達 / 問題行動 / レジリエンス / ペアレンティング / 貧困 / 物質的剥奪 |
研究実績の概要 |
小児期に経験する逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)は、成人期の身体的・精神的健康に影響を与えることが知られている。また、小児期にはACEsのようなリスク要因だけでなく、親との良い関わりなど子どもの心身の発達に保護的な要因も同時に経験している。本研究はリスク要因と保護的要因の両者を考慮に入れてながら、より良い心理社会的な発達を促すための政策提言を目的として研究を実施した。 本研究では、東京都A区の小学1年生およびその保護者を対象にした横断調査データを用いて分析した。最初にリスク要因として、逆境体験の中でも特に貧困(等価所得)による影響と、子どもに関連する物質の剥奪、生活に関する物質の剥奪による影響の違いを比較した。低所得世帯ほど物質的剥奪の頻度は多く認められ、最も所得の低い第四分位世帯においては勉強する場所(8.3%)、世帯人数分の布団・ベッド(7.5%)、子どもの絵本や本(6.3%)が頻度の高い物質的剥奪であった。次に保護的要因として、ペアレンティング8項目(勉強を見る、体を動かして遊ぶ、室内で遊ぶ、学校の話をする、ニュースの話をする、テレビの話をする、一緒に料理にする、一緒に外出する)に着目すると、子どもに関する物質的剥奪がある場合、最も所得の低い第四分位や生活に関する物質的剥奪がある場合と比較して、ペアレンティング項目の頻度が最も低かった。最後に、世帯所得、子どもに関する物質的貧困、生活に関する物質的貧困と子どもの問題行動(SDQ総合点、サブカテゴリーの点)及びレジリエンスに対する影響の違いについて多変量解析を実施し、論文執筆に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は、当初の計画のとおり、平成27年度に実施された東京都A区の悉皆的健康・生活調査データの分析を実施し、論文執筆に向けて準備中である。次年度は縦断調査データを用いて、小学校1年生時点での世帯所得、子どもに関する物質的貧困、生活に関する物質的貧困が、2年生・4年生時点での発達・レジリエンスに与える影響について分析する。その結果、逆境体験を有する親子において、経済的支援やペアレンティング支援の必要性やその効果について検証する。
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今後の研究の推進方策 |
現在分析中の研究について論文を執筆し投稿する。解析結果を学会発表・論文化するとともに、特に縦断データを重点的に分析し、逆境体験と子どもの発達の因果関係を明らかにする。特にその関係を媒介する変数(ペアレンティング行動)によって逆境体験の負の影響が緩和することができる、ということを検証する。また、子どもの発達の中でもレジリエンス・心理社会的発達を促進できる要因を明らかにすることに貢献していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会・研究会等がCOVID19流行で中止となり、旅費を予定よりは使用せず次年度に繰越となった。次年度は国内・国際学会への参加、及び、論文投稿・発表料に使用予定である。
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