本研究においては、子どもの生活と光環境との関わりを検討してきた。光環境が人の生体リズム(サーカディアンリズム)の調整に大きく影響していることが分かっている。これは、ipRGCと呼ばれる網膜上にある光受容体がリズム調整に貢献しているためである。特に子どもは影響を受けやすく、日中適切な光暴露を得ることと、夕方以降に過度な光暴露を避けることが求められている。 それらの背景を踏まえ、本研究では、子どもの生活の場における光環境の現状把握を行うとともに、適切な光環境整備を実施するための示唆を得ることを目的としている。夕方以降も保育を行う機関に通学させている子どもを持つ保護者へのアンケート調査や、それら保育機関に勤務する保育者へのアンケート調査を通して適切な光環境を検討するための基礎的な検討を進めた。 子どものサーカディアンリズムの傾向を知るために、朝方夜型度を算出するための質問を実施した。また光環境の状況を検討するため、子どもの生活している部屋の窓の状況や使用している照明器具の種類や使用方法に関する質問を実施した。これらの結果の比較により、光環境の状況のみならず、活動習慣などの影響が大きいことが分かったため、最終年度においては、子どもの行動記録に関する調査を実施した。特に保育者の観点からの子どもの行動観察は有用な記録であり、記録の種類や情報伝達の方法、記録の内容が特出すべきだと考えたからである。建築空間と連動した記録の有無や情報伝達や情報蓄積による子どもの生活や成長の記録の有無などを調査した。教育機関の種別などでの比較も実施した。
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