研究実績の概要 |
今年度は、3年計画の研究の最終年度として、これまで国内・海外における公文書館で収集した資料を整理するとともに、全国の児童相談所と公文書館へのアンケート調査結果などをまとめ、研究成果として著書『私の記録、家族の記憶 ケアリーヴァーと社会的養護のこれから』(大空社出版、2021年)を刊行した。また、紙幅の問題により、著書に盛り込むことが出来なかった研究成果については、「第1章 個人の存在証明としての記録-特別養子縁組に関する記録管理と開示の課題」、『アーキビストとしてはたらく: 記録が人と社会をつなぐ』(山川出版社、2022年)にて、公表することができた。研究論文ではなく、刊行という形式での研究成果の公表ができたことで、社会的養護や特別養子縁組に関する当事者が抱える記録へのアクセスの課題について社会が認知する契機になったのではないかと考えている。また、社会的養護の記録管理が当事者に与える影響は、国内にとどまらず、海外の社会的養護に関する当事者にも共通する課題であった。特に第三者情報の開示の観点では、オーストラリアなどにおいては、法律の柔軟な解釈を求める要請が当事者団体を中心にあった。そのため、国内の社会的養護の記録管理と記録へのアクセスの動向についてまとめた研究報告を2021年9月のThe Australian Society of Archivists(ASA)Conferenceで行い、(“Barriers Facing Care Leavers on Access to Records: Questionnaire Survey of Record-Keeping about Out-of-Home Care in Japan,”)記録へのアクセスの促進の障壁について意見交換をし、今後、法整備を含めた記録管理の動向について継続調査していくことを決めた。
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