研究課題/領域番号 |
19K14180
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
齋藤 有 聖徳大学, 児童学部, 講師 (60732352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 絵本選択理由 / 養育者 / 子どもの発達・興味 |
研究実績の概要 |
本年度は、既存のデータを使用し、養育者の絵本選択行動の規定因と、絵本選択とその後の絵本を介したやりとりの質との関連について予備的な検討を行った。 まず、第一子が就学未満で1年以内に絵本購入経験のある養育者1000名の、購入絵本の選択理由(自由記述)を精査したところ「子どもの発達・興味」「絵本自体の魅力」「評判・話題」「なんとなく」「その他」に分類できた。複数の分類に言及した養育者もいたが、今回は、このいずれか1つに言及し、かつ購入絵本の対象が第一子である養育者728名を抽出して、その絵本選択理由と、養育者や子どもの属性、その後の絵本の活用状況等との関連を検討した。 結果、父親では絵本選択理由として「なんとなく」が多いが、母親では「子どもの発達・興味」が多いこと、子どもの性別で違いはないが、3歳未満では「話題・評判」が多く、3歳以上では「なんとなく」が多いことが明らかになった。また、その後の選択絵本の活用頻度は「子どもの発達・興味」で高く「なんとなく」で低かった。さらに「絵本自体の魅力」では、選択絵本に対する養育者自身の好意度と、養育者から見た子どもの好意度いずれも高く、「なんとなく」ではいずれも低かったが、「子どもの発達・興味」では、養育者から見た子どもの好意度のみが高かった。 以上より、現時点では「なんとなく」絵本を選択するだけでは、その後の絵本を介したやりとりの質が低くなると推察される結果が出ているが、子どもが3歳以上で「なんとなく」絵本を選択する保護者が多いという結果からは、養育者が、子どもとの絵本を介したコミュニケーションを蓄積する中で、「なんとなく」でも「子どもの発達・興味」にあった絵本を選択できるようになる可能性も考えられる。今後、絵本選択行動の規定因として絵本選択の負担感や育児効力感等を含めるとともに、観察調査や面接調査も併用して、この点に関して検討を深めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は産育休を取得したため、新規のデータ収集をすることができなかったが、既存のデータを用いることで、本研究の目的に対する予備的な検討をすることはでき、著しい遅れではないと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、調査会社に依頼して、web上での質問紙調査を実施し、養育者の絵本選択行動とその規定因の検証を行う。予備調査で検討した変数を質問紙調査に含め、第一子が未就学児で、かつ、絵本選択経験のある養育者を対象として実施する。絵本選択行動は、絵本を選択する際の観点(子どもの発達や興味、絵本自体の魅力、評判・話題、なんとなく)だけでなく、絵本の入手方法(図書館や書店などで中身を見て、インターネットなどで中身は直接見ずに等)もデータ収集し、それらが絵本の活用状況や親子のコミュニケーション蓄積年数(すなわち子どもの年齢)、絵本選択の負担感や育児効力感、子どもの数、性別、気質等とどう関連するかを検証する。なお、質問紙調査の対象者のうち、同意が得られた一部の対象者については個別訪問等で、同内容に関する半構造化面接を行って詳細な情報を入手することで、質問紙調査による量的データの考察を質的に補完する予定である。 また、絵本選択行動の質と絵本を介したやりとりの質との関連の検証のため、さらに同意の得られた対象者については、養育者が絵本を使って実際に子どもとやりとりする様子を録画記録し、分析する。当初は訪問による録画記録を予定していたが、 時間的な制約や、訪問による録画は、日常のやりとりと性質が異なってしまう可能性が高いことから、家庭での録画記録を依頼する予定である。録画記録データから、養育者と子どものやりとりの言語・非言語的特徴を抽出し、絵本選択の質との関連を検討していく。 その後、観察調査で得られたやりとりの特徴を尺度化することができれば、再び調査会社に依頼してweb上の質問紙調査を実施し、 絵本選択の質とやりとりの質との関連について量的にも確認していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後の休暇、育児休業の取得により、研究の中断期間が生じたため。本年度は既存データを用いた予備調査に一部経費を使用したが、次年度は本年度予定していた新規のweb調査および面接、観察調査の実施に経費の大半を使用する予定である。
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