研究課題/領域番号 |
19K14182
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
横山 草介 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (60803484)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヴィジュアル・ナラティヴ / ナラティヴ / 質的研究 / 保育実践 / 教育実践 / 省察 / 保育者 / 保育の質 |
研究実績の概要 |
本研究は、保育の質向上に向けた保育者の実践の省察と改善に関わるアプローチに(a)ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチの方法論を導入し、(b)言語とは異なる手法を用いて保育実践の省察を行う方法を開発し、(c)その有効性を保育現場への試験的導入とフィールド調査に基づいて検証することを目的としている。 本年度の研究計画は研究の第2段階として、ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチに基づいた保育実践のリフレクション手法を開発することにあった。研究協力を得ている保育所を訪問し、フィールドでの調査を実施した。調査にあたっては「イメージ描画法(Image drawing method)」(やまだ, 1988)と呼ばれる手法を用い、保育士が日常の実践において抱いている実践観を視覚的なイメージによって描出してもらい、保育士間で共有する方法を用いた。実際の調査においては研究協力園の保育カンファレンスの時間を使い、上述の手法を試行するとともに、グループインタヴューによって研究のデータ収集を行った。得られたデータの分析結果は、2020年5月に催された日本保育学会第72回大会、同年10月に催された日本質的心理学会第17回大会において発表を行った。また、方法論としてのヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチの理論的な検討も進めており、2021年3月に催された日本発達心理学会第32回大会において指定討論を行なっている。 学術論文の成果については、日本保育学会の刊行する『保育学研究』の58巻に論文を掲載するとともに、大学紀要論文において研究の理論的な考察を発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、研究の第2段階として、ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチに基づいた保育実践のリフレクション手法を開発することにあった。以上の研究計画に照らし、当該年度の研究成果として以下の3点をあげることができる。 (1)研究協力を得ている保育所において予定通りフィールド調査を実施し、研究の基礎データを収集するとともに得られた研究データの分析に着手した。(2)データの分析結果について2020年5月に催された日本保育学会第72回大会、同年10月に催された日本質的心理学会第17回大会において成果報告を行なっている。(3)データの分析結果について学術論文として日本保育学会の刊行する『保育学研究』の58巻に論文を掲載するとともに、大学紀要論文において研究の理論的な考察を発表している。 ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチに基づいた保育実践のリフレクション手法の開発という研究目的に照らし、当該年度はフィールド調査に着手し、リフレクション手法開発の基盤となる探究を進めるとともに、研究成果を学会、学術誌を通して発表することができた。以上の研究成果に基づき、本研究は当初の研究計画に照らしておおむね順調に進展しているものとの評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度については引き続き、ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチに基づいた保育実践のリフレクション手法の開発を進めることを研究課題とする。フィールド調査を重ねることを通して研究データの収集・分析を進めるとともに、具体的なリフレクション手法の開発に着手する。当該年度の研究成果に基づけば、保育士が日常の実践において抱いている「実践観」を視覚的なイメージによって共有する方法は、実践の言語化を試みるよりも認知的な負荷が軽く、実践についての考え方の共有がしやすくなるという効果が明らかになっている。一方で、日々の保育実践に伴われる個々の具体的な行為や所作と結びついた「実践知」の共有には向かない可能性も明らかになってきている。これらの知見を踏まえつつ、ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチに基づいた保育実践のリフレクション手法の開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により2020年4月~2021年3月に予定されていたすべての学会がオンライン開催となり、出張旅費として計上した経費の使用が当初の計画通りとはならなかった。以上の理由より、旅費支出において前年度未使用額が生じ、次年度使用額に繰り越されている。次年度の研究計画においては感染症の動静に鑑みつつ、学会、研究出張旅費として使用予定である。また、2019年度に「独立基盤形成支援」による追加助成を得ているため、当初の研究計画において想定されていた「物品費」「その他」に関わる支出の一部を「独立基盤形成支援」による追加助成によって支出することが叶っている。これにより当初計画していた「物品費」「その他」の費目支出においても次年度使用額に繰り越されている部分がある。次年度の研究計画においては、研究の進捗に合わせ「物品費」「その他」に関わる支出として使用予定である。
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