研究実績の概要 |
本研究の目的は,園における4歳児の積み木場面に着目し,そこで行われる相互行為を明らかにすることである。研究初年度では,中型木製積み木を有する幼稚園4歳児クラスにおいて,合計70時間の参与観察調査を行っている。結果,①他児と積み木を構築させていく繰り返しの中で葛藤と調整が行われていくこと②葛藤と調整の媒介に積み木の存在は欠かせないが,積み木が単純な形体であるため,イメージを補う素材を持ち込む必要が生じること③中型積み木の操作は4歳児後半には一人で行えるものの,保育室内での占有率の高さから他児の目に触れやすく,デザインの模倣によるイメージの伝達が生じやすいことの3点を認めている。また,本研究では,4歳児積み木場面における保育者の役割についても検討を行っている。その結果,積み木場面における保育者の役割は,安全管理に関わる積み木の操作から子ども同士の相互行為に対する介入へと時期によって異なっている可能性を確認している。 研究2年目では上記結果に基づき、4歳児積み木場面において観察された葛藤と自己調整に関する検討を行っている。葛藤場面の解消において、自己調整能力の育ちは不可欠である。ただし、遊び場面では自己調整能力の育ちだけが解消に関与する因子となるのではない。遊びが持つ魅力そのものが葛藤等の課題の解消と関係する過程は、様々な実証的な研究によっても示されている。 本研究ではその遊び手が感じる遊びの魅力の一つとして、物語生成に着目している。4歳児積み木場面では、場面の展開を支える象徴的な物が積み木の場に持ち込まれることを必要とした展開が多く見られている。そこで、物語生成と媒介物に関する先行研究を概観し、園における4歳児の育ちと遊び場面における物語生成との関係、園における育ちを援助するものとしての積み木という媒介物の固有性に着目した発展的な検討を行っている。
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