研究実績の概要 |
本研究の目的は,園における4歳児の積み木場面に着目し,そこで行われる相互行為を明らかにすることである。研究初年度からの調査では,中型木製積み木を有する幼稚園4歳児クラスにおける参与観察の結果、(1)他児との積極的な相互行為は見られるものの,積み木を構築させていく繰り返しの中で葛藤と調整が行われていくこと(2)葛藤と調整の媒介に積み木の存在は欠かせないが,積み木が単純な形体であるため,イメージを補う素材を持ち込む必要が生じること(3)中型積み木の操作は4歳児後半には一人で行えるものの,積み木は,その大きさや保育室内での占有率の高さから他児の目に触れやすく,デザインの模倣によるイメージの伝達が生じやすいことの3点が観察された。 更に分析を重ねた結果、4歳児積み木場面における積み木は、①ごっこ遊びなどイメージした遊び場面を作り支えるための利用の他、②コリントゲームのような遊びにおいて、積み木を組み合わせて様々な構造物を作りその形状で遊ぶための利用など、見立て以外の利用も確認された。特に①の場面では、単独の遊び場面よりも複数での遊び場面が多く観察されたが、どのような場面であるかの伝達や共有化の頻度は低く、互いのイメージが曖昧であるためか、遊び手に「操作」と「観察」の行動が多く発生していた。②の場面では、形や大きさが異なる積み木の組み合わせを複数回試すという試行錯誤が見られ、操作の過程において、物体の動きの因果が確認できる場面が多く発生していた。 これらのことから、4歳児積み木場面における協働の場面では、積み木を操作していく過程において相互行為が促進されることが示された。また、積み木の形状や大きさに種類がある場合、多様な組み立てが可能になり、試行錯誤が促進される可能性が高いことが示唆された。
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