本研究は権利主体としての子ども観を歴史的に考察することを目的に、子どもの権利条約の精神と関わって注目されているヤヌシュ・コルチャックの子ども観および子どもの権利論を解明することを中心的な課題とした。 コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻によるポーランド社会の情勢から見送っていたポーランドへの渡航が、最終年度にようやく実現し、ワルシャワの図書館および資料館での研究資料の収集を実施することができた。物価高騰の影響により1度しか渡航することができなかったが、第二次世界大戦下のワルシャワゲットー内での児童救済活動に関する資料を複数入手することができた。これらの資料をもとに、戦間期から第二次世界大戦までの子ども観および子どもの権利論について、コルチャックの実践や当時のポーランドの子どもを取り巻く状況や議論から解明することができると考える。 研究補助期間の開始年度は子どもの権利条約採択30周年であったため、ワルシャワ大学名誉教授のヴィエスワフ・タイス氏による講演会「コルチャックと子どもの権利オンブズマン」を開催した。その後、研究交流会を行い、ポーランドおよび日本両国の子どもの権利を取り巻く現状や課題について議論した。 ポーランドへの研究出張が叶わなかった研究期間全体を通じて、デジタルアーカイブを活用して収集した資料をもとに、コルチャックの思想や実践についての解明、また現在のポーランドの子どもの権利オンブズマン制度についての整理を行い、日本の子どもの権利保障をめぐる現状や課題について考察をし、専門雑誌や学会発表で報告をした。
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