本研究の目的は,中学校数学教師が確率単元の授業研究を行なう際に役立てることができる,さまざまな道具/リソースの特徴を明らかにすることである。そのために,具体的には,相互に密接に関連する以下の3つの課題に取り組んだ:「課題1:中学校数学教師に向けに出版されている書籍や雑誌における確率指導関連の記事の調査」,「課題2:現在不足している道具/リソースを補填するための基礎研究」,「課題3:授業実践や授業研究といった異なる教師の営みを総合的に研究するための理論的枠組みの開発」。 各課題に対する主な成果は以下の通りである。成果1: 中学校数学教師向けの書籍や雑誌の記事において,特定のタイプの確率モデルが少ない傾向にあることが明らかになった。成果2:成果1で述べた不足している確率モデルを用いた教材を開発した。成果3:教授人間学理論の枠組み内で,教師の営みを研究するための枠組みを開発した。 成果1については,研究期間終了後ではあるが,集大成的な成果を国際学会で発表できそうである(本報告書執筆時点で,修正前提採択の判定)。成果2については,最終年度に集大成的な研究発表を国際学会で行なった。なお,この成果は研究期間の終了間際から国際共同研究に進展しており(スペインの研究者2名を含む共同研究),共同研究の結果をまとめた論文もすでにほぼできあがっている(国際雑誌に投稿予定)。成果3については,結果として,それは教師の営み以外の様々な「授業についての営み」(例えば,教科書を書く)を包括するものとなり,教授人間学理論それ自体の進展にも貢献しうるものとなった。最終年度にはこの枠組みについて,教授人間学理論の国際会議で招待講演を行なった。講演の内容を再構成した論文を現在準備中である。また,実際に国際的な文脈でそれを使用することを通して,その改善・補強もすることができた(スウェーデンの研究者1名との共同研究)。
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