本研究は、我が国の国語科教育において、これまでなされてきた、「人間、社会、自然、言語、文化、自己、愛、青春など」抽象的な事柄の追究を構成原理とする「主題単元学習」論の展開とその意義を明らかにする際に、これまで十分に検討の対象とされてこなかった、①戦前の教育営為と主題単元学習の関係、②アメリカでの主題単元学習の展開、③現代的な意義、の追究を行うものである。つまり、国語科における主題単元学習の成立に至るまでの流れやその学習が持つ価値を、通時的、共時的に明らかにすることを通して、現代的な学習モデルの開発を目指す研究である。 延長年度となった本年度においては、課題③(現代的な意義)を追求する研究成果を発表した。これまで、主題単元が、学習者に対する実践者の願いが先行したものと捉えられることも多く、国語科としての性格としての懐疑的な視点を向けられることもあった。ただしこれに対しては、主題単元の方法的意義を認めつつ、そのアプローチの中に「言語実践によって社会に共有された、ある主題をめぐる規範」を俎上に載せた国語科実践とする性格を持たせることによって、社会を意識した批判的なリテラシー育成の場とすることが可能であると考えられた。そのため、具体的な実践研究として、高等学校を対象とした古典教育実践(単元)の開発を目的とした研究を論文化し、公刊した。なお、これに派生し、上記の立場に立った際に考えられる、現代的な教材を用いたものも論文化している。 さらに、課題①を追求する過程で、新たに構想していた、戦前期の国語教材の開発に関わる研究についても、論文化した。
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