研究課題/領域番号 |
19K14203
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中川 篤 広島大学, 外国語教育研究センター, 助教 (90835498)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 当事者研究 |
研究実績の概要 |
世界中で教員の離職が深刻な問題となっているが,特に日本では長期化する傾向の強い,精神疾患を原因とする休職が非常に多いことが知られている。このような現状の背景には,教員が精神的負荷の高い感情労働であることに加え,保護者対応や報告書の増加などをはじめとする社会的な変化が原因として存在していると考えられる。この状況は一朝一夕に解決されうるものではなく,これからの時代に生きる教員は,こうした問題と上手くつきあっていく方法を身につけなければならない。 このような状況において,教員に必要とされるのが逆境を糧に成長する力「レジリエンス」であり,なかでも他者との関係性の構築や発展を通じて共同体として育まれる「関係性レジリエンス」である。本研究課題は,教員の関係性レジリエンスを高める取り組みとして,精神福祉分野の「当事者研究」という共同体を軸とする対話的手法を用いて,教員の持つ解決困難な問題に共同体として対処する方法を理論的に探究するものである。 2022年度はCOVID-19流行による行動制限を受け,研究に必要なデータを収集することが困難であった。しかしながら,2023年3月中旬より行動制限が緩和されたため,教員養成課程において当事者研究を経験した現職教員の協力を得てデータ収集を再開した。データ分析の結果,研究協力者は主に (1) 同僚の教員との人間関係,(2) 組織として新たに定められた教育実践方針と既存の組織習慣や学習指標との乖離,ならびに (3) 変化しづらい学校の体質に困難を感じていることがわかった。しかし,生徒や同居人といった significant others との良好な関係性を構築したり,当事者研究で学んだ,ユーモアを使うことで困難を笑い話に変え他者と共有したりすることで,教員生活を乗り切っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定では,2022年度で英語教師に向けた当事者研究のモデルを作成する予定だったが,COVID-19流行による行動制限を受け,研究に必要なデータを収集することが困難であったため,研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19流行による行動制限が緩和されたことから,さらなるデータ収集を進め,英語教師のための当事者研究のモデルの作成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行による行動制限を受け,研究に必要なデータを収集することが困難であったため,旅費や謝金などが発生しなかったため次年度使用額が生じた。今後は研究協力者への謝金や,書き起こしなどの費用に充てる予定である。
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