研究課題/領域番号 |
19K14208
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
古賀 洋一 島根県立大学, 人間文化学部, 准教授 (00805062)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 批判的思考力 / 探究 / 国語科教師 / 学校司書 / 高次の協働 |
研究実績の概要 |
2020年度までの研究活動を通して、生徒に反省的で生産的な批判的思考力を育むためには、対立する文章を通して問題を探究していくような授業が必要であることが分かった。その一方で、国語科授業に対しては「教科書に採録された一つの文章を丹念に読んでいく」授業が主流であるとの指摘も見られ、教科書外の文章を用いた授業を教師一人で構想することは非常に困難であることも見えてきた。このことを踏まえ、国語科教師が探究的な授業を構想できるようになるためには学校司書との「協働」が欠かせないとの視点から、そうした「協働」に長年取り組んできた教師と学校司書を対象とし、一年間に及ぶインタビュー調査を実施した。 2021年度は、それらのデータを分析し、成果発表を行った。まず、第140回全国大学国語教育学会では、学校司書との「協働」を通して国語科教師が何を学び、それがその後の授業にどのような形で活かされていくのかを明らかにした。また、第18回中国北九州地区国語教育学研究会では、両者の協働が資料提供を中心とする低次のものから、授業目標や指導過程を共に検討することを中心とする高次のものへと発展していく過程を捉えるとともに、そうした発展を促す要因を検討した。特に、前者の発表内容については、全国大学国語教育学会編『国語科教育』に採択されるなど、一定の成果をあげることができた。 その他にも、2019年度までに蓄積してきた論理的文章の読みの授業に関する実践的な知見を、全国大学国語教育学会編『公開講座ブックレット』や、第141回全国大学国語教育学会の課題研究発表へと組みこみ、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」と判断した理由は、インタビューデータをもとにした研究成果の学会発表や、査読付き学術雑誌への掲載といった、当初予定していた通りの成果をあげることができたためである。論文化が年度内に完了しなかったものもあるが、2022年度内には公表できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は研究期間の最終年度にあたるため、引き続き研究成果を発表していく予定である。まず、全国大学国語教育学会では、文学的文章の読みの授業を通した批判的思考力の育成をテーマとした発表を行う。本研究では、これまで論理的文章に限定した形で研究を進めてきたが、そこで得られた知見は文学的文章の読みの授業にも応用可能ではないかと考えるに至った。これは、当初の研究計画では予定していなかったことではあるが、①これまで文章理解の深まりに焦点を当てて論じられてきた文学的文章の読みを批判的思考力の育成という視点から問い直そうとしている点、②そのことによって「読むこと」教育全体を通した批判的思考力育成の可能性を見通せるようになる点で、得られる研究成果は非常に大きいものと確信している。その他の研究内容についても、いくつかインタビューデータの再収集が必要になる箇所もあるが、速やかに論文化をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて国内外の出張が中止となり、旅費の使用が少額にとどまったためである。これらの予算については、研究テーマの発展に伴う図書の購入費や、研究発表に伴う投稿料、追加で実施するインタビューデータを文字化するための反訳料、研究データを保管するための記憶媒体の購入費として使用する。
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