研究課題/領域番号 |
19K14214
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
玉腰 和典 明治学院大学, 心理学部, 助教 (60797174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 体育科教育 / 戦術・技術 / 認識形成過程 / 理論モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、体育科教育における認識形成の理論モデルを構築するべく、Ⅰ「戦術・運動技術に関する認識対象の階層的構造モデルの精緻化」、Ⅱ「戦術・運動技術に関する認識形成過程の実証的解明」、Ⅲ「認識形成過程を重視する学習指導論による研究Ⅰ・Ⅱの検討」という3つのアプローチを構想していた。1年目においては、それらの研究を遂行するための準備段階にあたる作業を遂行した。まず、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに関連する研究資料を収集した上で、Ⅰについては、現場教師と協同で実践づくりをしながら、その授業過程ではどのような認識対象がどのように階層的構造をもち、位置づけられているのかを検討していった。その結果、これまで解明していた認識対象の階層的構造モデルにおいては、学習活動との関連で十分に実践を分析しきることができないことが把握された。そして、実践者との議論を重ねるなかで、その1つの重要な要素として習熟があげられることがあきらかとなった。今後は、認識対象の階層的構造モデルが実践における認識活動を分析するモデルとなるよう、学習活動との関連をもつように改変していくことがもとめられる。また、Ⅱについては、次年度の分析にむけて、研究データを収集するべく、中学校教師2名に協力をえて、異なる発達段階でボール運動/球技教材に限定した実践構想を検討した。しかし、その実施段階の過程で、学校が休業となり、実証的研究のためのデータを今年度収集することはできなかった。今後も体育授業が平常で実施されるか不透明なため、これまでに収集してきた実践資料などを活用し、次年度は研究を継続していきたい。また、今年度は、認識形成過程の理論モデルを構築する際、実際の授業づくりとの関連性をもたせるために、カリキュラムの視点で体育授業づくりについて検討していき、その成果を一部公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度においては、認識形成の理論モデルの構築にむけて、Ⅰ「戦術・運動技術に関する認識対象の階層的構造モデルの精緻化」を進めることができた。主に小学校におけるボール運動教材の授業構想についてを実践者とともに分析していきながら、戦術・運動技術に関する認識対象の階層的構造モデルがどこまで実践に適用できるか、また適用できないとしたらどういった点なのかを検討していった。結果、実践構想においては、単元を通して、「課題の把握→実態の把握→方法の発見→習熟」という認識形成過程がサイクル化している実態を把握することができた。これまで「課題の把握→実態の把握→方法の発見」から「課題や方法の修正」がなされていたが、単元を通してみると、学習課題が変化している点がみられる。そこでは、発見された方法が習熟することで、あらたなゲーム様相がうまれ、次の課題設定へと向かうプロセスが存在していた。そのため、運動学習における認識形成においては、「習熟」との関係をふくめてその過程を検討していくことがもとめられることがあきらかとなった。また、単元の後半では「課題の把握」については教師が主導になった誘導的発見学習だけではなく、グループ練習による問題解決学習の場合もあり、学習方法の差異と認識形成の過程とがどのように関係していくのか、さらには、ボール運動における戦術的特性が認識形成過程に一定の法則性をもたらしているのかどうかを検討することも今後の課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度解明されたのは、認識形成の理論モデルと実際の授業づくりとの関連性についてであった。まだ部分的な検討となっているため、今年度においては現場教師に協力をしてもらい、協同で認識対象の階層的構造モデルやその実践的な活用について議論をしていく機会をつくりたい。特に、実際の授業づくりを認識形成過程の観点からどのようにモデル化していくことができるのかを検討していく。また、今年度においては現場教師と協同での実証的研究ができなくなった。さらに、今後も学校体育は平常に実施されるかどうかは不透明である。現場教師と協同での実証的研究は、学校体育の再開状況をふまえ、判断していきたい。一方で、これまでにおいても現場教師との協同で実践づくりをしており、その過程で、本研究を遂行するための研究資料については収集してきている。そこで、次年度においては、こちらの資料を分析することを検討する。また、次年度においては、イギリスにおける戦術学習論を牽引した方を訪問し、研究交流をしていく。研究交流をふまえ、イギリスで開発された戦術学習論において、どのように認識形成過程が構造的に位置づけられているのか、また実践的に適用する際にはどのような配慮がなされているのかを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は海外の研究者と研究交流する予定であったが、渡航が困難となり、次年度に使用することとした。次年度については海外渡航をし研究交流をしていく予定である。
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