研究課題/領域番号 |
19K14215
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
若井 由梨 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (20644040)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダンス指導 / 指導の困難さ / 言語化 / イメージや動き |
研究実績の概要 |
本研究は、教育現場における教員のダンス指導の資質向上に役立てるための研究である。小中学校の教員に向けて実施した、申請者による先行調査(ダンス授業における実態調査)によって、教育現場では「イメージや動きを言葉にすることの難しさ」をダンス指導の中で抱えていることがわかっている。そこで本研究では、「イメージや動きの言語化」という観点において、学校教育現場のダンス授業のみならず、コーチングの分野や、科目や体育種目の垣根を越えたスポーツの角度から、イメージや動きを言語化して児童生徒に伝え、多様な表現を引き出せるようなダンス指導プログラムの考案を目的にしている。2022年度においては、コーチング分野におけるプロの舞踊家によるダンス指導によって、どのような効果があるのか、その指導手法の背景に垣間見る「イメージや動きの言語化」の手掛かりを明らかにするため、学習者へのインタビュー方法を用いて分析した。(論文化し現在査読中)。 当研究における研究事例対象は、プロの舞踊家による大学生ダンス部部員へのダンス指導(コーチング現場における指導)であり、特に身体面への効果に着目した。プロの舞踊家がダンス部部員に振付や動作の指導を受けることで、学習者であるダンス部部員は「主観的な身体の感覚への気づき」と「客観的な身体の見せ方への気づき」の2つの要素において気づきを受け止めていることがわかった。その中には自分自身の身体感覚に訴えかける要素や、示範された動きと自分の動きとを対比する中で差異を自覚する要素、舞踊家自身の動きを間近で目にする中で意識改革に繋がる要素などが含まれており、これらは指導者の実演を視覚的に目にしたり、指導言語と重ね合わせて理解したり、触覚的な刺激を受けたりすることによって、効果が一層高まっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度においては、前年度の学会発表から引き続き論文化する作業に取り掛かっていたものの、度重なる査読の対応に時間を割かれてしまい、次の段階の研究に踏み込むことができずにいた。こうした現状より、研究構想段階における計画性の重要性を痛感している。また予期していなかった事態として、所属している研究機関の異動が重なる時期となってしまったため、落ち着いて取り掛かることができなかった。 本研究課題の最終年度となる2023年度は、ここまでの研究成果を活かし、最終目的であったダンス指導プログラムの考案段階までには挽回して繋げられるよう、引き続き研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度においては、ダンス指導プログラムの考案までを到達目標として進めていく。当初予定では、様々な複数の指導現場をフィールドワークとして訪問し、プログラム作成に生かす予定であったが、コロナ禍によって十分に訪問機会を立案し実行することができなかった。その点においては文献研究等によって研究資料を補いつつ、プログラム考案に活かしていくこととする。また、今年度より新たな研究機関となった大学は幼児教育を専門とする保育者養成校であるため、当初の予定ではなかったが表現の原点となる幼児期における身体表現にも着目する要素を加え、幼小連携教育に生かされ、現場に還元できる有益な研究成果を出せるよう邁進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一に、フィールドワークにおける海外訪問や県外訪問において、感染症予防の理由による、所属研究機関の規制が厳しく(研究の目的による出張は認められているが、部活の監督を任務としている立場上、帰国後や遠方出張後の自宅禁止等の規制を恐れて)、訪問計画を立案・実施することができなかった。そのため、当初想定していた旅費が計上されなかった経緯がある。第二に、学会等も未だオンライン開催で実施している団体もあり、同様に旅費等の出費が抑えられている。第三に、フィールドワークにおけるコーチング現場の実態把握やインタビュー調査自体が実現できなかったため、そのデータ収集やデータ入力に想定された人件費が計上されておらず、次年度に残されている。 2023年度になり研究所属機関が変わり、勤務状況および業務内容にも変化が生じたために、学会参加や教育現場への出張等への出費が今年度は想定される。またダンス授業プログラムを考案していく中で必要な教具や設備機器に発生することが想定される。
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