研究課題/領域番号 |
19K14218
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研究機関 | 桃山学院教育大学 |
研究代表者 |
八木 利津子 桃山学院教育大学, 教育学部, 准教授 (00780313)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学校園安全 / 異年齢集団活動 / ヒヤリハット / 防犯教育 / 共育プログラム / 多世代交流活動 / リスクマネジメント / 養護教諭 |
研究実績の概要 |
本研究の到達目標は、防犯教育を主軸に異年齢集団活動や多世代間交流に依拠した安全教育を広く校種別に提示することであり、ヘルスプロモーションの理念に基づき包括的支援を取り入れた地域連携による安全共育プログラムとアセスメントシートを構築することにある。 申請者は学校の健康教育と危機管理の関連性を概念図に示した上で、異年齢集団や多世代交流による合同防犯学習の教材作成を試みた。初年度は、関西・北陸・関東圏を中心に幼稚園や小学校を対象に児童や教職員が考える安全課題の現状把握のために、ヒヤリハット調査を実施し各校園のリスク要因を明確化し、共育コミュニティを意識した組織体制づくりに活かす研修資料と安全分野を中心とした防犯教育に役立つ掲示物を作成した。 その手段として、教育的側面(絆づくりと個人スキル、地域連携)と管理的側面(防犯訓練等の緊急時シミュレーション)の両観点から実践介入した。教育的側面のアプローチでは、児童と地域ボランティアのヒヤリハット体験調査結果に基づき、申請者が作成した掲示教材を提供することで実践介入に至り、異年齢集団を意図した参加型学習を展開し上級生が下級生に伝達する授業方法を設定した。管理的側面のアプローチでは、教職員のヒアリングと質問紙調査から事例検討に考察を加えて、安全共育プログラムの素地指導に活用可能なシミュレーション訓練資料や報告書作成を提案した。 本調査結果の分析によって、教職員を対象にした危機管理研修の必要性(ニーズ)が高いことが明らかになったことから、申請者が改編した「緊急時フローチャート」と「アクションカード」を併用して教職員研修の実践介入を行うに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は予定通り進んでおり、初年度の成果は、調査対象を小学校に絞ったことで、教育現場からの声を重要視して教材作成に留まらず介入に踏み込めたことである。 主に市街地の大規模小学校と小規模小学校、郊外地の中規模小学校、市街地の大学付属一貫系列校他において、調査協力校に在籍する小学生や教職員および地域ボランティアの回答結果から、ヒヤリハット体験を軽減する方策として現場で求められている頻出コードデータをもとに指導教材を作成することができた。それらの教材を活用して上級生が下級生にサポートする異年齢集団活動による危機回避力の育成を提言(試行)し、有効な安全教育の在り方を探る予備考察に纏めた。実際、安全共育プログラムの効用を検討するために実践前後の介入時には、学校危機対応モデルに対応するヒヤリハット事例に注目して段階的な予防方法を念頭に進めた。学校安全を中核とした健康教育の構成図を視野に入れて、①危機管理体制の整備②研修計画の充実③発達段階に応じた体験型の健康教育の三本柱を土壌とした授業参画は、円環モデルの危機緩和・危険予防(一次予防)から身体的・社会的・情緒的回復促進(三次予防)まで循環的に取り組みを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の調査では、反応シートやヒアリング調査、行動観察による集約が行えたものの、継続的な取り組みの経年変化をみる不安尺度を用いた分析に至っていない。 次年度は新版STAI調査を地域住民ボランティアと教職員等を対象に実施する予定である。分析に用いるのはSpielberger 氏が開発した新版STAI調査により状態―特定不安調査を用いた実践前後の変化に考察を加えて、危機回避力の育成における教育評価シートが提言できるように不安尺度の測定による有用性の有無を明らかにする。 また、継続的な教育実践による年次推移や追跡調査が必要であることから、分析結果や研究資料を十分担保する予定である。そして、現在のフィールドは小学校が多いことから、2年目は市街地に位置する中学校や関西圏内外の特別支援学校や就学前の教育現場も追加調査対象とするなど他校種・他地域を選定し実践介入していくことや、系統立てた安全共育プログラムを開発してデータ収集する。さらに、放課後ディケアサービスや児童館に通学する幼児や児童などの学校外施設も長期的な研究対象に含めて、本研究分析結果で得られた安全共育について、汎用性があるかなど本研究成果の一般化を目指して資料収集に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に調査を予定していた一部対象校において、臨地(九州方面)調査の前に行うオンライン動作による実態調査と現状把握に係る予備研究は、Web上での情報交換を優先した。そのため、調査協力校の交通費ならびに謝金等が使用予定額より下回った。 さらに、新型コロナウィルス感染症拡大防止対策に関連して出張自粛の対応により、2020年2月~3月に研究成果発表を予定していた学会参加を控えるとともに一部学会発表(年度末)が中止となった。 それらの理由により宿泊を伴う調査費や出張旅費等が使用計画額より下回る結果となった。 次年度には参与観察による調査を拡げるなど、新たに介入する調査対象地域が含まれており、2年目の研究計画においては実践研究の出向頻度やそれに伴う物品購入、通信費用および謝礼を含む旅費が当初より上回る予定である。
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