研究課題
2年目の研究計画は、新型コロナウイルス感染拡大防止の対応により、調査対象の実践介入校における実践内容や協力校(協力地域)に制限は生じたものの、研究活動はほぼ順調に進んでいる。本研究の到達目標は、防犯活動を主軸に異年齢集団活動や多世代交流に依拠した安全教育を広く提示することであり、ヘルスプロモーションの理念に基づき包括的支援を取り入れた地域連携による安全共育プログラムとアセスメントシートを構築することにある。2020年度は小学校における在籍児童及び児童の安全を取り巻く地域住民(見守り活動ボランティア)を対象にヒヤリハット調査を行い、当該学校がどのような健康課題を有しているのかを考察し、樋口氏(2014)が開発したKHCoderを用いた計量テキスト分析法を用いて対応策について取りあげた。児童の自由記述からは、「歩く」「走らない」「よくみる」「前を向いて歩く」「一人一人が注意する」「逃げる」など児童の個人行動に関わる対応策と「みんなに伝える」「廊下に注意書きをする」「互いに声をかける」「ヒヤリハットで危ないところを発表する」など他者を意識した集団行動に関わる対応策の二方向のリスク・マネジメントに依拠した回答が得られた。また、見守り活動ボランティアの上位抽出語から共起ネットの検出結果は、【子ども】を【思う】意識は【安全】が【必要】というグループと【車】を【意識】したグループに派生し、強い2グループのネットワークが出現した。これらの分析結果を踏まえて、上級生が下級生に伝えやすい安全共育プログラムを基盤に掲示資料を作成し、申請者が提言することで新たな安全共育プログラムの実践介入に至った。
2: おおむね順調に進展している
理由は、視覚教材の提示に加えて、申請者が自助努力を要する児童にとって、より身近なソーシャルキャピタルと言える学校関係者や学校区内の地域の人材を活用した“共助”を高める教育活動を探るべく、学校生活下において事件や事故等の危機対応を考え、「危機管理のプロセス図」に示したことにある。これらの分析結果と申請者が作成した「危機管理プロセス図」を用いて、ヒヤリハット体験を軽減する方策として現場で求められている安全共育の視覚教材を作成し、異年齢集団活動を意図した実践介入に至った。その教材を活用して上級生が下級生にサポートする異年齢集団活動による危機回避力の育成を提言し、有効な学校安全共育の在り方を探索することができた。
2020年度は児童生徒を対象に事例検討から共育プログラムの構築を目指した結果、質的調査と量的調査の両面からアプローチできたことは成果であったが、作成した掲示資料や手法が安全性を担保する汎用性(一般化)と、指導法は持続可能か、異年齢集団活動における安全共育そのものが有用かどうか今後も実践的研究が望まれる。次年度には地域ボランティアや指導者側の教員を対象にした安全共育のアセスメントシートの開発に向けて介入する。また、アセスメントシート(評価尺度)の活用意義やその効用について実践的な検証を継続し、書籍や学会等で研究成果を発表する。
初年度に引き続き新型コロナウイルス感染拡大防止の影響により、研究成果を発表するために予定していた全ての学術集会がオンライン開催となったため、出張旅費が発生しなかった。また、実践介入により調査を予定していた一部対象校において、コロナ禍で教育現場の協力が得られないケースが生じたことや、現地調査に伴う出張を自粛したために協力校に出向する交通費並びに謝金が下回る結果となった。次年度においてはアセスメントシートの開発に向けて、新たに介入する調査対象地域が含まれており、教材作成のための物品購入や調査費、通信費、謝金などが発生する見込みである。さらに、研究成果を発表するための旅費も上回る予定である。
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