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2020 年度 実施状況報告書

駆け出し社会科教師の専門性開発研究:「理論的根拠」の形成支援に注目して

研究課題

研究課題/領域番号 19K14221
研究機関徳山大学

研究代表者

大坂 遊  徳山大学, 経済学部, 准教授 (30805643)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード教師教育 / 教師教育者 / 社会科教師 / 理論的根拠 / 駆け出し期 / 初任者教師 / rationale development / セルフスタディ
研究実績の概要

本研究では,教員養成期~初任期にかけての初等中等社会科教師の専門性開発のあり方に資するべく,①米国における「rationale」研究の到達点の解明,②「理論的根拠」を基盤にした教師教育実践のデザインと試行,③教師教育者のセルフスタディのデザインと試行,の3つの研究を3ヶ年計画で推進していく。2年目にあたる令和2年度は,これらのうち主として②および③に関連する2つの研究を並行して進めた。さらに,新たな研究展開の必要が生じたため,当初の目的を拡張して追加的な調査・研究を推進した。
②に関しては,COVID-19の影響により,当初予定していた初任高等学校教諭に対する「理論的根拠」の問い直しと成長を促す介入型の研修を対面形式で実施することが困難となった。その代替措置として,オンライン上で継続的に実践の省察を促し改善のための情報を提供するメンタリングを実施した。調査を通して,困難な状況にある生徒が多く通う学校の教師に求められる業務の多様さが明らかになるとともに,教科指導を中核としてそれらの生徒との関係を構築しようとする駆け出し社会科教師の取り組みの一端が解明された。
③に関しては,当初の予定通り,教師教育者である研究代表者が研究協力者(大学教員)とともに,自らの実践を対象とする「セルフスタディ」を複数回実施し,学会等で報告した。研究を通して,教師教育者が自らの理論的根拠を形成する基盤には,被教育経験に基づく教育観が影響していることが明らかとなった。
これらに加えて,当初の計画を拡張して,多様な経歴を持つ複数の駆け出し期の社会科教師に対して,「理論的根拠」の形成を把握するための継続的な調査を実施した。調査の結果は分析中だが,非常事態とも言えるコロナ禍において,初任社会科教師がどのように社会科実践における信念を形成していくのかに関する,有益なデータを得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当該年度は,1年目に実施できずに先送りとなっていた,米国における「rationale」研究の到達点の解明を中心に行う予定であったが,コロナ禍により米国における現地調査が実践できなかった。3年目である令和3年度もCOVID-19が収束する見通しが立っておらず,米国における現地調査は困難な状況となっている。加えて,コロナ禍により初任社会科教師の専門性開発を現地を訪問して行うことができず,また初任社会科教師の実践経験自体もコロナ禍を通して大きく変質しつつある。このような状況の中で,当初の研究計画自体を見直すと同時に,研究の実施方法や調査対象も見直しを迫られつつある。
一方で,オンライン上での授業観察やメンタリング,そしてインタビューなど,コロナ禍によって当初想定していなかった遠隔での調査・支援が可能となったのは大きな収穫であった。また,教師教育者自身の専門性開発のためのセルフスタディは当初の予定通り順調に遂行し,着実に成果をあげている。これらのことから,今後はオンライン上での調査・研究へとシフトし,オンライン上で完結する研究へと方針を転換していくことも視野に入れている。

今後の研究の推進方策

コロナ禍により不可逆的に変質した初任社会科教師の経験,子どもたちの教室空間,社会インフラ等を考慮して,当初の予定を一部変更して研究を遂行する。具体的には,以下の3点を実施したい。
第一に,初任中学校教諭に対する,自身の社会科教育実践の理論的根拠の問い直しと成長を促すオンラインメンタリングプログラムの実施である。月に一度程度の継続的な面談と支援の実施を通して,メンタリングの効果や課題を把握したい。
第二に,昨年度実施した複数の駆け出し社会科教師に対する「理論的根拠」の調査データの分析である。コロナ禍により通常の初任社会科教師とは大きく異なる経験を通した教師の語りと実践記録を分析することで,コロナ禍が「理論的根拠」の形成にどのような影響を与えたのかを明らかにしたい。
第三に,社会科教師教育者の理論的根拠の解明と開発に関するセルフスタディの継続と成果の公開である。すでに複数の研究協力者とともに研究を進めており,本年度中に新たなオンラインセミナーシリーズの実施,海外査読誌への投稿,出版に向けた原稿の収集を進めている。

次年度使用額が生じた理由

第一の要因は,旅費の節約である。米国および欧州の大学等を訪問して現地調査を実施する予定であったが,COVID-19の影響により実施することができなかった。また,同じくCOVID-19の影響により学会等が全てオンライン開催となり,自宅等から参加が可能となった。これらの結果,旅費支出が当初予定より大幅に少なくなった。
第二の要因は,人件費の節約である。初任社会科教師に対するインタビューデータのテープ起こしの業務をアルバイトに委託することを予定していたが,調査データの収集に難航した上,アルバイトの業務時間も十分に確保できなかった。これらの結果,人件費の支出が当初予定より大幅に少なくなった。
翌年度は,学会等が現地開催されることも見込まれるほか,海外渡航も可能となる見込みが残されている。繰り越された助成金をもとに,学会等での報告や海外での現地調査を実施したい。また,インタビューデータのテープ起こしを業者に依頼したい。

備考

①と②は,本研究に直接関連する学会等発表の開催報告記事である。研究代表者が記事の原案を作成した。
③は,コロナ禍における初任社会科教師の専門性開発を支援するために,広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)が開発した動画コンテンツである。研究代表者がページの作成や動画の編集,解説動画の作成等を担当した。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] 教師はどのようにCOVID-19を授業化するか:社会科と保健体育科の2人の教師を事例として2021

    • 著者名/発表者名
      川口 広美,大坂 遊,金 鍾成,高松 尚平,村田 一朗,行壽 浩司,佐藤 甲斐
    • 雑誌名

      学校教育実践学研究

      巻: 27 ページ: 49-56

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 金 鍾成,渡邉 巧,大坂 遊2021

    • 著者名/発表者名
      教師教育者のためのセルフスタディ:研究の歴史・思想から実際まで(3)
    • 学会等名
      広島大学教育ヴィジョン研究センター第69回定例オンラインセミナー
  • [学会発表] 教師教育者が学生に期待する主体性:協働的なセルフスタディを通した批判的考察2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤 眞宏,大坂 遊,渡邉 巧
    • 学会等名
      日本教師教育学会第30回研究大会
  • [学会発表] 教師教育者のためのセルフスタディ:研究の歴史・思想から実際まで(1)2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤 眞宏,大坂 遊,渡邉 巧
    • 学会等名
      広島大学教育ヴィジョン研究センター第49回定例オンラインセミナー
  • [図書] オンライン授業の地平:2020年度の実践報告2021

    • 著者名/発表者名
      大坂 遊
    • 総ページ数
      126
    • 出版者
      雷音学術出版
  • [図書] 遠隔でつくる人文社会学知:2020年度前期の授業実践報告2020

    • 著者名/発表者名
      大坂 遊
    • 総ページ数
      172
    • 出版者
      雷音学術出版
  • [図書] ポスト・コロナの学校教育:教育者の応答と未来デザイン2020

    • 著者名/発表者名
      大坂 遊
    • 総ページ数
      182
    • 出版者
      渓水社
  • [備考] ①「教師教育者のためのセルフスタディー研究の歴史・思想から実際までー(3)」報告記事

    • URL

      https://evri.hiroshima-u.ac.jp/15463

  • [備考] ②「教師教育者のためのセルフスタディー研究の歴史・思想から実際までー(1)」報告記事

    • URL

      https://evri.hiroshima-u.ac.jp/12656

  • [備考] ③「社会科教科書の執筆者からの挑戦状」ウェブサイト

    • URL

      https://evri.hiroshima-u.ac.jp/chousen_jou

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公開日: 2021-12-27  

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