研究課題/領域番号 |
19K14222
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山崎 美穂 帝京大学, 教育学部, 講師 (50824132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数学的価値 / 日豪比較 / 学習者 |
研究実績の概要 |
2021年度は,昨年度に引き続き,学習者が抱く「数学的価値」の特徴について調べるとともに,日豪における学習者が抱く「数学的価値」の特徴を捉えるための調査問題について検討を重ねた. 学習者が抱く「数学的価値」の特徴については,数学学習の実際とを結びつけて数学的価値の特徴を明らかにするために,解法に関する多様な考えを評価する場面における質問紙調査を実施し,その回答データに対して対応分析を行った.その結果,数学教育において価値づけることが望ましいと位置づけられている対象に数学的価値が付与される場合であっても望ましい数学学習に至るとは限らないことが明らかになった.この研究成果は,紀要『帝京大学教育学部紀要』10巻において,査読付き論文としてまとめられている. また,特定の数学学習場面で登場する3つの解法から選択させる調査を分析した結果,学生の数学的価値には3つのタイプがあり,表面的な形の解を重視する場合は,論理的な飛躍に注意を払わない傾向があることが明らかになった.このことから,ポジティブな価値が必ずしも良い学習につながるとは限らないことが明らかになった.この研究成果は,国際学会The 14th International Congress on Mathematical Educationにおいて,口頭発表にて報告をし,研究者間での意見交換を行った. また,数学的価値がどのように学習者の行為を関わるかを検討するため,社会批判的モデリングに着目した.学生・生徒の実態を紹介する先行研究データを分析し,社会批判的モデリングの際に現れる数学的価値について整理した.その結果として,数学的価値が社会批判的モデリングに影響を与えており,特にモデル構築・検討において重要な役割を果たしていることが分かった.この研究成果は,『日本科学教育学会年会論文集』45巻においてまとめられている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き,新型コロナウィルスの影響を受け,日豪における小学校・中学校における調査を実施することができなかったためである.特に,オーストラリアにおいては,学校閉鎖や時間規制等があったため,現地にて実態把握をすることがかなわなかった.
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリアの学校の担当者と密に連絡をとり,人数が少なくとも今年度調査を実施できるように打ち合わせを行い,学習者の抱く「数学的価値」を捉える調査を実施する.当初の研究計画からは調査の実施時期にずれが生じているため,本研究課題の期間延長を検討し,調査結果の整理を進めていくつもりである. 日本における小学校・中学校で実施予定の調査については,新型コロナウィルスの影響に配慮しながら,現場の教師および保護者に事前に調査依頼を行い,オーストラリアでの調査と連携させて,2022年度に実施する予定である. 調査結果の分析や解釈においては,それぞれの学習者を担当している現地の教師とメールやWeb会議システム等を用いて意見交換を行い,理解を深める.
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次年度使用額が生じた理由 |
日豪の小学校・中学校の学習者に対して調査の実施および分析を行うための費用にあてる.紙面調査に関しては,国際・国内郵便にて通信費と謝金として使用する.授業分析に関しては,新型コロナウィルスの影響に配慮しながらの実施にはなるが,国外・国内の移動費として使用するとともに,現地で使用されている教科書等の教材資料を揃えるための備品費として使用する.調査の分析に際しては,日豪の現地の教員に研究協力を依頼して行うことから,通信費および謝金として使用する. また,研究成果の発表および報告のため,研究動向を把握するための書籍・論文費として使用するとともに,旅費および論文投稿料として使用する.
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