研究実績の概要 |
2023年度は,日豪において調査した学習者のデータを分析し,学習者の抱く「数学的価値」についての考察を行った.その結果,調査で提示した問題解決場面に対する解法に関して,オーストラリアの学習者と日本の学習者では,価値付ける解法の種類に違いがみられること,および,解法を価値付ける理由において違いがみられることを明らかにした.この研究成果は,日本科学教育学会第47回年会において,口頭発表にて報告をし,研究者間での意見交換を行った. そして,特に,オーストラリアの学習者はパターンや変化に着目する解法を価値付ける点に特徴があり,日本の学習者はそれに加えてまとまりに着目する解法や統合的に捉える解法を価値付けている点に特徴がみられた.この点は,これらの学習者の価値付ける解法の違いの背景には日豪のカリキュラムの違いが影響している可能性があることを明らかにした.また,解法を価値付ける理由については,日豪の文化的影響が考えらること,および,学習者の抱く統合性や進歩性に関する「数学的価値」は限定的な側面となっていることを明らかにした.そして,実践への示唆として,平日に学習する教育内容の重要さについて,および,問題解決において答えを求めて終わりとするのではなく振り返り評価することの重要性について,指摘した.この研究成果は,Dede,Y.,Marschall,G.& Clarkson,P.(eds)『Values and Valuing in Mathematics Education』において査読付き論文としてまとめられている. また,これらの研究成果については,日豪それぞれの調査協力教員に提示し,文化的影響との関わりについての確認と意見交換を行った.
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