研究課題/領域番号 |
19K14223
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研究機関 | 滋賀文教短期大学 |
研究代表者 |
藤山 あやか 滋賀文教短期大学, 子ども学科, 講師(移行) (90838971)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 器楽教育 / 初等音楽教育 / ドイツ / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本年度は研究初年度であり、ドイツ・ハンブルク州で実施されている器楽教育プロジェクト“Jedem Kind ein Instrument(どの子どもにもひとつの楽器を)” の実際について現地調査を進めた。当該プロジェクトは、器楽学習を通じて多様化する価値観を共有し、共存社会の実現を目指す取組みであり、ハンブルク教育省JeKi部門の管轄のもと、市当局、各学校の専任講師(JeKiコーディネーター)、外部講師の三者連携により市内62校の基礎学校で実施されている。 まず、ハンブルク州で実施されている音楽教育の現状を外観するため、2019年9月、JeKiが実施されている基礎学校4校(カール・コーン基礎学校、ターデン・シュトラーセ基礎学校、トラーバーヴェーク基礎学校、アルンキール・シュトラーセ基礎学校)を訪問した。本年度に訪問した基礎学校では、3・4年生を対象としたヴァイオリン、チェロ、フルート、コルネット、クラリネット、キーボード、ギター、打楽器(カホンなど)の第2~3回目の授業を参観した。授業参観後には、当該プロジェクトに携わる各基礎学校の音楽専任講師と外部講師のインタビューを行い、プロジェクトの実施状況について調査を進めた。これにより、授業展開、教育カリキュラム、指導法の特徴などを整理し、通常の授業との相違点や関連性を明らかにすることができた。 また、ハンブルク州立図書館を中心に、カリキュラムに基づいた教科書や指導書、各講師が授業で使用している教材など当該プロジェクトに関する研究資料を収集した。さらに、ハンブルク教育省 JeKi 部門主任ガブリエラ・フスラーゲ氏との面談の機会を得ることができ、当該プロジェクトの教育理念や、導入校の選定基準や講師の雇用等について詳細に説明を受け、ハンブルク州の初等音楽教育の現状について調査を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツ・ハンブルク州での現地調査を計画通り実施することができ、基礎学校で実施されている器楽教育プロジェクトを中心に、地域社会と連携した組織的な教育活動を展開している初等音楽教育の実際を知ることができた。また、ハンブルク州の器楽教育プロジェクトは、公教育機関の音楽学校との連携により実施されていることから、音楽学校に勤める講師にもインタビューを行い、学校と地域の関わりについても調査を進めることができ、現地でしか入手できない関連資料を収集することができた。 2019年8月には、全国大学音楽教育学会全国大会にて、これまでの現地調査で得られたデータや文献に基づきJeKiの概要をまとめて「ドイツ・ハンブルク州における器楽教育の実際について -JeKiプロジェクトの事例から-」をテーマに研究発表を行った。また、2019年9月には、同研究会にてハンブルク州でJeKiを実施している基礎学校での実践例をあげ授業展開と指導法の特徴についてまとめ、「ドイツの音楽教育における多文化共生に向けた取り組み -ハンブルク州JeKiプロジェクトの事例から-」をテーマに、ハンブルク州の社会状況と教育活動の現状について現地取材の調査をまとめ報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ国内では、各州においても類似する教育プロジェクトが展開されており、すべての子どもたちが音楽教育にアクセスできることを目標としており、これらの取組みが地域の芸術文化を持続的に発展させていくことを目指している。当研究では、ハンブルク州での器楽教育プロジェクトを中心に調査を進めているが、他州にも着目して引き続き研究資料データを収集し、類似プロジェクトと比較検討することにより、音楽教育の理念や教育内容について日本国内の音楽教育への示唆を得たい。 また、各州で実施されている音楽教育プロジェクトは、市当局と学校教育現場、そして音楽学校の講師など地域社会の連携体制のもと実施されていることが分かった。学校教育現場での音楽活動が子どもたちや家族、地域と繋がるきっかけとなっていることから、音楽学校と学校教育の関わりなどを含めて地域での取組みにも着目し、地域社会と連携して行う音楽教育プロジェクトの有効性および今後の発展性について検討したい。なお、海外調査については、オンラインでのインタビュー調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度にドイツでの現地調査を2回行う計画であったが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う出張キャンセルのため1回のみとなり旅費に払い戻しが生じた。なお、当初計画していた現地調査は次年度に行い、出張旅費として使用する。
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