研究課題/領域番号 |
19K14224
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研究機関 | 独立行政法人教職員支援機構(次世代教育推進センター調査企画課) |
研究代表者 |
吉田 尚史 独立行政法人教職員支援機構(次世代教育推進センター調査企画課), 次世代教育推進センター, 研修特別研究員 (80836502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 災害経験 / 学校と地域の関係 / 課題解決型学習 / 教育課程 |
研究実績の概要 |
2019年度は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故によって自治体外で学校を再開させた浪江小学校における「ふるさとなみえ科」の創設・展開過程を明らかにするため、学校が再開した2011年8月から2014年3月までを対象期間として、資料収集と当時の管理職や教師たちへの聞き取り調査を進めた。その結果、「ふるさとなみえ科」創設の経緯やその後の展開を解明できた。本年度の研究成果は、今後同様の状況におかれた学校関係者の指針となるものである。また、「ふるさとなみえ科」が2014年4月から双葉郡の全小中学校で取り組まれることになる「ふるさと創造学」策定時の参考事例とされていたことが明らかになった。このことから、被災校における災害経験からの学びと共有のメカニズムは、教育行政等による影響を視野に入れながら解明していく必要がある。研究成果は、日本教育経営学会第59回大会で発表した他、論文化に向けて執筆を進めた。 また、2019年度は東日本大震災の被災地において災害経験の継承がどのように生成されているのかを捉えるために、被災校における教育課程の編成・実施の状況を中心に先行研究や各種情報の収集に取り組んだ。「ふるさとなみえ科」の創設・展開過程の背景に全町避難による学校と地域の分断という課題があったことを踏まえると、浪江小学校の事例は東日本大震災の被災校の中でも特徴的な課題に向き合った事例だと言える。よって、次年度以降、被災後に自治体内で学校再開した事例との共通性や差異を捉えながら被災校における災害経験からの学びと共有のメカニズムを解明していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当時の浪江小学校は、災害による急激な環境変化の中にあったことから教育実践の記録化や知見の体系化が困難な状況であった。そのため、当初予定していた通りの調査を進めることが難しかった。また、浪江小学校は児童数の減少のため2020年度から休校となり、2021年4月1日付で閉校となることが決定した。 このような予期していなかった出来事が起こったが、2019年度については、浪江小学校並びに当時の管理職や教師たちにご協力いただいたおかげで「ふるさとなみえ科」創設の経緯やその後の展開を解明できた。また、今後の課題として教育行政等による影響を視野に入れる必要性を確認できた。 上記のような予期していなかった出来事はあったものの研究を進めることができたため、研究の進捗に遅れはなく、おおむね順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は「ふるさと創造学」の策定・展開過程を解明するため、策定に携わった教育長等や「ふるさと創造学」に取り組んでいる公立学校の教職員への聞き取り調査を予定している。それとともに資料収集も進める。また、被災後に自治体内で学校再開した事例の調査を行う予定である。事例としては岩手県大槌町を予定している。以上のように当初の計画から事例の追加等の変更があったものの、次年度以降、研究対象とする事例は選定済みであり、アポイントと情報収集も完了している。 2020年度の調査で得られた知見の一部は、日本教育経営学会での発表を予定している。また、適宜論文化を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は当事者からの資料提供や聞き取り調査による「語り」の収集を主要な研究方法としている。そのなかで2019年度は当初予期していなかった出来事に対応する必要があった。そのため、初年度は計画的に経費を使い切ることができなかった。2020年度は引き続き調査を進める予定のため旅費等で使用する予定である。
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