研究課題/領域番号 |
19K14225
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
石井 洋 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50734034)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教師の評価力 / 授業改善 / パフォーマンス評価 |
研究実績の概要 |
当該年度では、大きく二つの方向性で研究を進めてきた。一つは信念に基づく実践的知識(PPK)の形成過程に関する考察で、JICA課題別研修に参加したアフリカ数学教師に焦点を当て、彼らがいかに問題解決型授業のPPKを形成していくのかを実証的に捉えることを目的として調査を行った。開発途上国では評価力の低い教師が多く、生徒の実態を適切に捉えることができないことが、生徒主体の授業実践を阻んでいる要因として考えられる。そこで本研究では、生徒の学習状況を反省的に捉えることによる授業改善の枠組みを考察した。研究成果としては、 PPKの形成について、授業観察だけではなく、実践化、それに伴う省察、そして生徒の学習状況によって、複雑に混ざり合いその相互作用の中で不規則に生起していることが明らかとなった。 二つ目は、学習評価に関する基礎的な研究として、ペーパーテストの可能性と限界について考察した。児童の学力を捉えるための評価方法の一つであるペーパーテストに焦点を当て、現在我が国の小学校で用いられている業者テスト、標準式学力テスト、全国学力・学習状況調査を取り上げて分析した。ペーパーテストは、「知識・技能」を測定するためには問題なく使用でき、便利なものであるが、正誤の二分法で評価することによる思考力・判断力・表現力の深浅さが判断できないこと、テクノロジーを含むツールの活用ができないことといった制限があることを明らかにした。本研究により、生徒の学習状況を的確に捉えるためには、パフォーマンス評価等の新たな評価手法の必要性が明確となり、教師の評価力を向上させるための方向性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生徒の学習状況を反省的に捉えることによる授業改善の枠組みを構築するために、学習評価に関する基礎的な研究として、ペーパーテストの可能性と限界について考察した。生徒の学習状況を的確に捉えるためには、パフォーマンス評価等の新たな評価手法の必要性が明確となり、教師の評価力を向上させるための方向性を見出すことができた。 教師の評価力を向上させるための研修プログラムについては、JICA課題別研修に参加したアフリカ数学教師に焦点を当て、彼らがいかに問題解決型授業のPPKを形成していくのかを実証的に捉えることで、その検証を行うこととした。研究成果としては、 PPKの形成について、授業観察だけではなく、実践化、それに伴う省察、そして生徒の学習状況によって、複雑に混ざり合いその相互作用の中で不規則に生起していることを明らかにした。一方で今後の課題として、短期的なPPKの形成に留まらず、長期的な過程として捉える必要性が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、今後教師の評価力を向上させるための研修プログラムを開発途上国(ザンビア及びサモア)の調査校において実施する予定であった。しかしながら、COVID-19の感染拡大により渡航の自粛が求められ、国内で調査をせざるを得ない状況となっている。幸い、研究室にインドネシア人とナミビア人数学教師が国費教員研修留学生として派遣されてきたので、彼らに調査協力を依頼し、本研究を継続していきたいと考えている。そして、渡航可能な時期が来た際には再度調査計画を立て現地にてフィールドワークを行う予定である。最終的には授業改善の枠組みと評価力向上プログラムを関連付けながら、今後の開発途上国における授業改善の方向性について考察することを目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については購入を予定していたPCが年度末までに納入できないことが明らかとなったため、一旦キャンセルすることになった。そのため、次年度当初に購入を予定している。旅費については、海外渡航が行えない状況になったため、キャンセルすることとなった。次年度以降に学会の参加や調査での渡航を行う予定である。
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