本研究の目的は,中学校技術科の熟達教師の実践知を表出し,実践知を教員養成課程の学生に伝承するための授業研究方法を開発することである。 これまでは,ウェアラブルカメラを用いた主観的な映像を活用した授業リフレクションを教員養成課程の中で行い,学生のリフレクションの内容と意味構造を明らかにした。その結果,学生が授業中に課題と感じる教育技術や教科内容を授業の文脈に沿って整理することができた。これについて論文化し発表した。 今年度は,技術科授業における主体的・対話的で深い学びの実現を目指す実践知の意味構造を明らかにすることを目的に調査を行った。調査は,再生刺激法による熟達教師の省察を基に行った。教師はウェアラブルカメラを装着し技術科授業を実践し,授業後,映像を見ながら授業リフレクションについて発話した。発話記録から得られたテキストデータ熟達教師がもつ実践知の構成概念を表出した。そして,構成概念を実践知を支える4つのスキルと主体的,対話的,深い学びの枠組みから構造化したモデルを作成した。その結果,技術科授業の文脈に沿った実践知の構成概念を明らかにすることができた。これにより,熟達教師の実践知の他者との共有が期待される。これについては論文化し投稿中である。 今後は,教員養成課程の学生が授業業実践で感じる課題をデータベース化し,課題に対する熟達教師の実践知を整理することで,世代間の実践知の継承を促進する方略について検討する。
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