本研究は,小中学校における特別活動の中でも,特に学級活動を対象とし,学級「集団」による学級活動が児童生徒「個人」の基本的心理欲求を充足させ,それが児童生徒「個人」の更なる学級活動への積極的参加につながり,さらに「個人」の学級適応や,人間関係形成,社会参画につながるという往還的なモデルを,実際の学級活動の観察や質問紙によって検証することを目的としていた。 2019年度は小学5年生の1学級について,特別活動の観察と質問紙調査によって,当該学級「集団」の現状の把握と,気になる児童生徒「個人」を特定し,その上で学級観察と二度目の質問紙調査を行うこととした。学級活動の観察より,当該学級「集団」は,話合い活動を活発に行うことができ,また互いの意見を否定せずに聞くことができる学級「集団」であり,お互いを尊重し合う学級風土が形成されている様子が見られた。しかし,一部の児童を対象として,他の児童が言外の排斥を行っている雰囲気も見られ,学級に属する全ての「個人」が基本的心理欲求が充足されている状況ではないと推測された。 2020年度,2021年度は,質問紙調査及び学級活動の観察を継続し,観察事実の検証を行う予定であった。しかし,新型コロナウィルス感染症による学校の休校や部外者の学校への立ち入りが難しい状況が断続的に続き,実施できなかった。 2022年度は,研究計画時に想定した調査対象校での調査目処がたたないため,大学生を対象とした回想法による質問紙調査を実施した。その結果,小中学校でのポジティブな学級風土が個人の基本的心理欲求充足に概ね良い影響を与えることが示唆された。一方学級内の不和のようなネガティブな学級風土は個人の基本的心理欲求充足を阻害する要因となる可能性も示された。
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