研究課題/領域番号 |
19K14230
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 真帆 千葉大学, 教育学部, 准教授 (30710298)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伝統 / 文化 / 美術 / アイデンティティ / カリキュラム |
研究実績の概要 |
2021年度は中学校で3つのケーススタディーと生徒を対象にした質問紙調査を実施した。中学校の美術科での伝統工芸の授業を作成、実施した。調査は、主に授業観察、教師や生徒へのインタビュー、資料収集を行った。実施した授業は、それぞれ鑑賞と表現活動を取り入れた日本の伝統工芸を通した広く文化理解を目的とするものとした。授業は2020年度までの調査結果に基づき、生徒が文化としての日本の伝統工芸を学ぶことによって自らの文化的アイデンティティを構築していくことを支援することを視野に入れたものだった。教材として身近な伝統工芸として手ぬぐい、背守り、組紐など日常生活で使われるもので、先行研究より美術科授業での実践に課題があるものを選んだ。授業デザインは主に研究者が行ったものの、より教育現場にふさわしいものにするため授業者と検討し、授業進行中に授業評価を取り入れ、改善しながら進めていった。授業モデルを作成する有効な方法であるばかりでなく、理論と実践のより良い接続の観点からも可能性があると考えられる。また、新型コロナウイルス感染拡大の状況下の制限のある中で、直接の観察や聞き取りが制限された状況で、生徒自身が興味を持って熱心に取り組む姿や参加した美術教師が自ら持つ伝統工芸の理解を深める姿が観察されたという成果は大きいといえる。中学生への質問紙調査では日本の美術文化や伝統工芸に対する興味関心について明らかにすることができた。これまでの成果の一部は国際学会で発表し、脱植民地化の美術教育に関する理論的な議論に貢献することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2年目に計画していたフィールドワークをベースにした調査が、新型コロナウイルスの感染拡大のため渡航の自粛や教育現場へのアクセス制限により実施できなかった。そのため、当初はデータのまとめと成果の発信を予定していた3年目の計画を、研究の目的に基づいて研究デザインを再検討した。遅れやそれに伴う変更は余儀なくされたものの、所属機関の地域の中学校からの理解と協力が得られ、2202年3月までに3つの伝統工芸の授業を2つの学校で実施し、データ収集を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
主にこれまで収集してきたデータの分析、統合を進め、考察を深め、結論を出していく。一部未実施のフィールドワークや学校での授業実践は可能な範囲で今年度前半に実施する。インタビュー、授業実践、質問紙からのそれぞれのデータの分析の後、データを統合して考察を進める。成果発表のため論文投稿及び学会での発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に研究成果を発表及び資料の収集を予定していた国際美術教育学会が新型コロナウイルス感染拡大防止のために延期となり、参加費及び渡航費を盛り込んだ旅費が発生しなかった。オンラインで学会参加であったことまた学会評議委員のために参加費が発生しなかった。同様の理由で、授業研究の際に工芸家への講師依頼ができなかったため人件費が発生しなかった。次年度は、国内でのフィールドワーク及び授業研究で教材費や人件費が派生する予定である。また、成果発表のため英語論文校正、国際ジャーナルへの投稿支援、報告書出版へ使用予定である。
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