研究課題/領域番号 |
19K14231
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
榊原 範久 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50824231)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 批判的思考 / 初等中等教育 / 思考ツール / 学習状況の可視化 / 学習方略 |
研究実績の概要 |
本研究では、学習状況を可視化する思考ツールや汎用的な学習環境モデルを開発し、小・中学生の批判的思考を育成することを目的としている。 その目的の達成のため、3つの段階を計画している。第一は、学習状況の可視化や、批判的思考に関する先行研究を収集・整理・分析してその関連性を検討することである。これに関する研究内容は、博士課程学位論文「批判的思考を育成する思考ツールと学習方略モデルの開発」として執筆し、その中の第1章を中心にまとめた。学位論文については2020年3月に受理され、公開されている。 第二に、学習状況の可視化の枠組み(Framework)を3つに分類し、それぞれの枠組みで活用できる思考ツールや、学習環境モデルを開発し、小・中学生の批判的思考を育成する研究を進めている。その中で思考ツールを用いて学習者の混沌とした思考を紙面上に表出することを「個人内思考の可視化」と定義して、その有効性を臨床的に検証した。そして思考ツールの開発と評価を含めて論文としてまとめ、日本社会科教育学会の論文誌に採録された。 現在、第三の、研究を総括的にまとめる段階へは到達していない。 開発した思考ツールや学習環境モデル、学習方略のあり方については、小中学校の研究会や講座で情報提供することを計画していた。2019年度は神奈川県の公立中学校で「未来に必要な資質・能力ー批判的思考の育成ー」、愛知県の公立中学校にて「新学習指導要領における授業デザインのポイントー思考ツールの活用と主体的に学び合う学習環境モデルー」を演題として、現職の教員を対象に講演を行った。研究成果を教育現場に還元する活動を継続的に行っている。いずれも本研究に興味を持った学校現場からの講演依頼であり、小中学校における「批判的思考」や「思考ツール」などについてニーズの高まりが見られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究について、研究計画書に記載した内容に基づき、スケジュールの通り進んでいるため。 具体的な成果として、本研究に関わる内容について、投稿論文1編、博士課程学位論文、学会発表2件を行った。さらにデータ収集が終わった内容について、データ分析と論文執筆を進めている。2019年度分の研究については、しっかりと成果を残している。 しかしながら、3月に発表を予定していた日本科学教育学会の学会発表は、新型感染症の拡大に伴い中止となった。また、計画上は2020年度に予定されていた小学校での実践を前倒して3月に計画していたが、これも延期の状況で日程の目処は立っていない。 これらの点から「当初の計画以上に進んでいる」には至らず、「おおむね順調に進展している」レベルであると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2019年においては、順調に進展させることができた。しかし、現在は新型感染症の拡大に伴い、学校現場で調査・テータ収集する機会を得ることができていない。外部の研究者が入ることに対して許可が得られるまで研究は停止する必要がある。また、研究計画に授業実践のデザインとして、「話し合い活動」や「協働学習」といった音声発話の伴う学習を前提として計画をしていた。しばらくはこのような計画は難しいと考え、研究の方向性の修正を検討している。現在、ICTを活用した研究を一部に盛り込んでいるため、それを拡大して研究を進めていくことを考えている。ICTを用いて学習状況を可視化し、「新しい生活様式」を前提に、学習者の発話を伴わなくても、成立する協働学習の授業デザインを検証していくことを考えている。また、学校現場に対する研修会の実施については、2020年前期に予定していたものは全て中止となっている。状況を見て、オンラインなどの方法も活用しながら再開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、当初の計画より旅費の消費が少なかったからである。年度末に予定していた研究会や視察等は新型感染症の関係で中止となったことが原因である。 しかしながら次年度使用額は10万円以内に抑えられており、研究計画の進行は概ね順調である。残額は次年度の研究に関わる論文投稿費用、別刷代等に使用することを計画している。
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備考 |
博士論文「批判的思考を育成する思考ツールと学習方略モデルの開発」(兵庫教育大学連合大学院,2020年3月)
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