本研究では、学習状況を可視化する思考ツールや汎用的な学習環境モデルを開発し、小・中学生の批判的思考を育成することを目的として研究に取り組んだ。 研究の目的の達成のため、3つの計画段階を設けて取り組んだ。第一は、学習状況の可視化や、批判的思考に関する先行研究を収集・整理・分析してその関連性を検討することである。これに関する研究内容は、博士課程学位論文「批判的思考を育成する思考ツールと学習方略モデルの開発」として執筆した。学位論文については2020年3月に受理され、公開されている。 第二に、学習状況の可視化の枠組み(Framework)を3つに分類し、「個人内思考の可視化」、「周辺の学習状況の可視化」、「全体の学習状況の可視化」とした。それぞれの枠組みで活用できる思考ツールや、学習環境モデルを開発し、小・中学生の批判的思考を育成する実践研究を行った。それらの研究を分析し、論文としてまとめ、日本社会科教育学会の論文誌に採録された。そして、第三の、研究を総括的にまとめる段階へ進み、研究成果を広く発信した。本年度は批判的思考を育成する研究を2編の論文にまとめ、日本教育工学会、日本理科教育学会の各論文誌に採録された。 開発した思考ツールや学習環境モデル、学習方略のあり方については、小・中学校の研究会や講座で現職の教員を対象に研究成果の報告を行った。研究期間終了後も本研究成果を土台にして、批判的思考の教育の推進や思考ツールの実践的な活用をテーマに教育現場に還元する教員研修を継続的に行っている。
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