研究課題/領域番号 |
19K14235
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
川原崎 知洋 静岡大学, 教育学部, 准教授 (10512535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非認知的能力 / 子どもの造形 / 共創する空間 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、認知的発達段階及び幼小接続の視点から、共創空間プログラムの開発・実施を通して、数値化されにくいとされる非認知的能力を美術科教育における評価手法を援用して解析し、非認知的能力も含めた総合的能力開発の系統化と実装化を目指すことにある。 今年度の研究成果として、グランシップ(静岡市)で毎年5月に開催される「こどものくに」という幼児期の子どもを対象とした造形イベントの企画監修に携わった。子どもたちが創作する場を互いに共有し、創作した作品に自由に触れ合うことのできる環境(共創空間)を整備することで、子どもたちの想像力や発想力を伸ばすことを目的としている。共創的な空間をベースとした造形プログラム「金色シールで世界を作ろう」と、造形体験プログラム「ボールの大きさを比べよう」を企画開発した。2021年5月2~5日までの4日間、実際に多くの子どもたちとその保護者の直接的な反応と行動を観察する予定である。 研究開始直後から、国内で実践されている子ども向けの工作イベントや企画展示などを視察してきた。当初は美術館や子ども関連施設等で実施されている工作ワークショップを中心に視察していたが、科学館に設置されている体験装置や、博物館での体験型展示やハンズオン展示、屋内外の公園の遊具も共創空間の可能性を広げる事例であることがわかった。来年度以降も社会状況を確認しながら、継続して視察する予定である。 2021年3月、「子どもの共創空間の類型化と非認知的能力の関係について ―グランシップこどものくにの実践を通して― 」(静岡大学教育学部附属教育実践総合センター紀要No.31、pp.179-186)を投稿した。2013~2020年までに行った造形イベントで実践した共創空間を「子ども同士の関わり方」という視点で3つに類型化し、共創空間での体験が非認知的能力に与える影響について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度、2020年度と幼児期の子どもを対象とした造形イベントの企画監修に携わり、子どもたちが創作する場を互いに共有し、創作した作品に自由に触れ合うことのできる共創空間をデザインした。「共創空間における造形活動は子どもたちのイメージや活動の幅を広げる」ということを仮説とし、多くの子どもたちとその保護者の直接的な反応と行動を観察した。子どもたちの「イメージや活動の幅を広げる力」が非認知的能力にどのように寄与し関連しているのかについて明らかにする必要があったため、2021年3月、「子どもの共創空間の類型化と非認知的能力の関係について ―グランシップこどものくにの実践を通して― 」(静岡大学教育学部附属教育実践総合センター紀要No.31、pp.179-186)を投稿した。2013~2020年までに行った造形イベントで実践した共創空間を「子ども同士の関わり方」という視点で3つに類型化し、共創空間での体験が非認知的能力に与える影響について考察した。今年度も新たな造形プログラムと共創空間を企画し、2021年5月に実践する予定である。 美術館や子ども関連施設等で実施されている工作ワークショップを中心に視察していたが、科学館に設置されている体験装置や、博物館での体験型展示やハンズオン展示、屋内外の公園の遊具や装置も共創する空間の可能性を広げる事例であることがわかった。 新型肺炎コロナウィルス拡大の影響と家庭の事情により、予定していた欧米諸国で開催された子ども向けのアートプログラムや造形ワークショップの視察を行うことが出来なかった。共創的な空間における子どもの活動と非認知的能力の向上との相関について、及び子どもの非認知的能力の可視化・数値化の方法について、美術科教育の評価手法を手掛かりに主に文献調査によって研究を推進している。
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今後の研究の推進方策 |
新型肺炎コロナウィルス感染拡大の影響を受け、今年度も海外で行われている造形プログラムの視察は困難であると思われる。共創的な活動が見込まれる国内の科学館や博物館、屋内外の公園や遊具の視察を中心に変更する予定である。 共創空間における造形プログラムの実践研究も継続し、新たに企画開発している造形プログラムの共創空間での実践(2021年5月)を行う。①非認知的能力に関する理論研究、②共創的な空間における子どもの活動と非認知的能力の向上との相関について、③子どもの非認知的能力の可視化・数値化の方法について、以上の3点を中心に美術科教育の評価手法などを手がかりに理論研究を推進する。また、国内で視察した共創空間での子どもの活動と空間デザインを分析し類型化を試みるなど、文献調査と視察調査に重点を置いて取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎コロナウィルスの影響と家庭の事情により、当初計画していた国内外の共創空間の視察調査が予定通り推進できなかったことが大きな要因となっている。今年度は社会状況を確認しながら、国内での共創空間の視察調査を推進させながら、子どもの共創的な活動を生み出す玩具及び遊具に関する先行事例の研究とプロトタイプ制作を行うため、そのための経費として次年度使用する予定である。
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