研究実績の概要 |
批判的パトリオティズム、批判的教育学、対話的構築主義の概念を用いて相互理解の主体同士が行う実際の対話である「真正な対話」という概念を導くことができた。本研究では、国境を超える「真正な対話」として「より良いヒロシマ教科書づくり」プロジェクトをデザイン・実施した。主なデザイン原則としては以下の4点があげられる:①自らの語りを可視化させた後に新たな語りの可能性を示唆することで、既存の認知枠組みを揺さぶる。②子どもが自己と他者の語りを取り巻く(政治的な)文脈を捉えられるように支援する。また、それを分析・批判する機会を設ける。③内集団の探究/話し合いの結果を外集団の構成員に伝える機会を設ける。また、意見の行き来がつづくように支援する。④集団のナラティブを象徴し、かつ子どもに馴染みのあるものを対話の媒体に選定する。 上記のデザイン原則に基づいてデザイン・実施された日韓の社会科教員志望学生による「より良い『ヒロシマ』教科書」づくりの成果は以下の発表や論文としてまとめられている。 ・Kim, J., Kusahara, K., & Nam, H. (2019, October). Creating cross-cultural discourses: Korean and Japanese pre-service teachers “Make a Better Hiroshima Textbook,” Presentation to the Conflict and Identity Conference 2019, Oxford, UK. ・金鍾成(2020)「他者の語りに開かれた市民を育てる:「広島平和記念資料館の『The last 10 feet』再デザイン」プロジェクトと「より良い『ヒロシマ』教科書づくり」プロジェクトを事例に」教育哲学研究、第122号、pp. 12-18。
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